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落合博満と中日が受けた「あり得ない扱い」… それでも「いま落合監督に勝る監督はいない」と長嶋茂雄や江夏豊が称えたワケ
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/12/13 17:30
2010年日本シリーズでの落合博満監督。岩瀬仁紀に笑顔を見せる
「いま、もっとも厳しい、非情な監督は中日の落合監督でしょう」
自らの野球観に照らし合わせて、その水準に達した選手を起用する。言い換えれば水準以下なら、切り捨てる。実績ある主力でも油断があれば、ポジションを固定しない。“チーム内競争”とはよく言うが、全くの私情を挟まず実行した点に、長嶋も驚きを隠せなかったのだろう。
自分のために家族のために野球をやれ
<名言3>
ここまで来られたのは選手のおかげ。
(落合博満/Number792号 2011年11月25日発売)
◇解説◇
「他の誰かのために野球をやるな。自分のために家族のために野球をやれ」
4回のリーグ優勝を果たすことになる「オレ竜」落合監督のチームには、井端弘和に荒木雅博、和田一浩や森野将彦に谷繁元信と、勝ち方を知っているメンバーがそろっていた。
彼らに対して常に「勝たせるのは俺の仕事だ。好き嫌いはしない。良い者を使う。だから自分の成績だけを考えてやれ」と伝えていた。時には説明もなく交代を命じられ、反発する選手もいたというが、落合は機を見てさりげなく課題を呟いたともいう。独特だが、落合らしい指導法だった。
そんな落合の“電撃退任”が突然発表されたのは、2011年9月22日のことだった。当時の球団代表はこの年に落合が野球殿堂入りしたことを節目と理由づけて、次期監督の高木守道氏に「新しい風」をもたらしてもらいたい、とした。
しかし、首位ヤクルトとは4.5差とはいえ優勝が懸かるシーズン終盤戦での発表は、現場に大きな波紋を呼んだ。結果、フロントの判断に反骨心を覚えたチームは一気に勝ち星を伸ばし、失速したヤクルトを抜き去り連覇を達成したのだった。
<名言4>
選手のことを考える指導者として、落合監督はトップクラスだよ。
(江夏豊/Number792号 2011年11月25日発売)
◇解説◇
2011年、日本シリーズに2年連続で進出した落合中日。前年のロッテとの激闘の末に敗れたリベンジ、そして指揮官・落合の花道を――という思いを感じさせる戦いぶりで、パの絶対王者になりつつあったソフトバンク相手に3勝3敗の第7戦までもつれ込んだ。