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「全日本プロレスに入れなかった男」の逆襲…王者ジェイク・リーを“フォークで血だるま”にしたアブドーラ・小林が三冠戦に挑む
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2021/12/12 17:02
「大日魂」のタオルを掲げるアブドーラ・小林。師匠アブドーラ・ザ・ブッチャー譲りのダーティーファイトで、三冠のベルトを持ち帰ることができるか
小林は自信ありげだ。「どうせ挑戦したところで取れっこない」と思っているファンが大勢いることを知っている。
「(三冠挑戦については)賛否両論。でも『賛』の方が多い。もっと『否』があってもいいんじゃないかな。決着はリングでつけますよ。正々堂々と。ルールは尊重しますよ。でも何やってもいいんでしょ。場外で10カウント以内なら何をやってもいい。そういうルールがある以上、それを存分に使わせてもらいます。過程は自由でしょ」(小林)
「大日本で三冠のベルトをお披露目してやりますよ」
来たる三冠戦に向けて、小林は早くも流血戦になることを予告した。
「殴れば血が出るのは当たり前でしょ、戦いですよ。鼻狙えば、鼻血だって出るでしょう。痛いのがプロレスなんですから」(小林)
新春から全日本プロレスは50周年という節目の年に入り、リングのキャンバスも50周年仕様に一新されることが決まっている。だが、その50周年仕様の新しいマットを新春から赤い血で汚すことに、社内では反対意見があるという。
「いいよ。ここまで言っているんだから。三冠戦は今使っているマットで行こう」(リー)
リーはあっさりと流血戦を容認した。小林はもっと否定的な言葉が自分に向けられると思っていた。逆にそれを期待していたのかもしれない。リーはもちろん、全日本のファンに「小林は三冠挑戦者の器じゃない」ともっと否定してもらいたかったのだろう。簡単に「ああ、そう」では、小林としてはつまらないのかもしれない。
「オレが全日本の至宝に挑むんですよ。それが『賛』でいいのか。昼に三冠のベルトを取ったら、夜の大日本のリングで第1試合の前にお披露目してやりますよ。ダブルヘッダーはきついな」(小林)
小林にとってこれは大きなお年玉だ。「やりたい放題」を主張する小林は「明るく、楽しく、激しいプロレス」を掲げた。
一方のリーは、「オレはこの体が武器だから」と言った。明確に異なる両者のスタイルがぶつかり合う1月2日の後楽園ホールは、かなり面白くなりそうだ。