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<何かが水面下で…>「全日本プロレスでいいのか」三冠王者ジェイク・リー、宮原健斗との“60分間の死闘”後に語った言葉の真意
posted2021/10/19 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
10月16日、大田区総合体育館の前には2人の写真が入った一風変わった看板があった。その前で記念写真を撮っているファンも多くいた。看板にはこう書いてあった。
「過去 栄光を 語ってんじゃねえ 何度も言ってやるよ 今、全日本プロレスは俺だ! お前は主役になれない」(第64代王者 ジェイク・リー)
「いつの時代も主役は2人もいらねえ 俺には主役しか似合わない エース、主役、チャンピオン 全て俺が やる」(挑戦者 宮原健斗)
“主役”をめぐる舌戦から60分フルタイムの死闘へ
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試合前は“主役”をめぐる舌戦だった。
「以前はライバルだ、とボク自身言ったけれど、周りが(リーを)そう見なかったし、まだまだ自分の方が優位だと思っていた。だが、今は試合の先のビジョンを描く余裕がない。ただ、余裕がない時のボクが強いというのも知っている。
全日本プロレスの主役は、宮原健斗がいる限りその座を奪うことはできない。ベルトを失って1年半、自分が主役であり続けるために、プロレス界は主役が似合う男、オレに任せろ」(宮原)
「人生の価値観が全く違う。ものを見る目だったり、感じることも、すべてが違う。だから、オレたちは戦う。始まり、始まりだよ。終わるんじゃない。オレは何度も言ってきた。もう、いろいろなことが動き始めている。その始まりだ。
オレがこのベルトを取った時点で時代は変わった。今はオレの時代だ。お前は営業部長で宣伝部長だ。50周年の時に、誰がこのベルトを持っているか。チャンピオンらしく受け止めてあげますよ」(リー)
10月16日に行われた王者リーと宮原の三冠ヘビー級戦は長い試合になった。
最初の15分が過ぎた頃には、30分は超えるものになるな、と筆者は思った。
だが、40分を超えた頃には、これは決着がつかないかもしれない、と思うようになった。宮原が何度ヒザをぶち込んでも、リーは跳ね返した。リーがバックドロップやブレーンバスターでフォールを狙っても宮原は跳ねのけた。
試合終了のゴングの後、2人はリングに大の字になった。全体的にはリー優勢に映った試合だったが、宮原の意地も十分に感じられた。
三冠王者が示した覚悟「オレが突き抜けてやる」
「V3達成で、いいのかな。どう思います」
ジェイク・リーは60分時間切れ引き分け防衛の後、記者たちの感触を確かめるようにそう言った。