現役大学生である以上、学業が最優先であることは言うまでもない。ましてや、個人スポーツではないのだからチームスケジュールや事情もある。しかもコロナ禍の今、急がなくても卒業してからでもいいのではないか、という声もあった。それでも自らの意志を貫き、決断した理由が高橋にはあった。

「日本では20歳はまだ若い学生というイメージですけど、海外ではこの歳ならプロとしてやるのも当たり前。1人の選手としてもそうですし、日本代表としてオリンピックを経験した立場としても、次のオリンピックまで3年しかない、という焦りもあります。だから、また海外から声をかけてもらえるかもしれない、そうなるように頑張ろう、ではなく、今がその時だ、と。

　オリンピックで自分の課題を突き付けられた。それを克服するには海外でプレーするのが一番で、東京で獲れなかったメダルをパリで獲るためにも、イタリアへ行くのは今がベストなタイミングだと思って。自分が成長すれば、それだけ日本も強くなることにつながるはずだし、何より、自分自身のために海外でやりたい、やってみたい、と思ったんです」

©︎Kaoru Watanabe/JMPA

「圧倒的な強さを見せて優勝」

　だからこそ、なのか。全日本インカレに臨んだ高橋は、事あるごとに同じ言葉を口にした。

「インカレでは圧倒的な強さを見せて優勝したい。やっぱり高橋は違う、と思ってもらえるような、格の違い、みたいな強さを見せつけたいです」

　他の選手とは違う経験をしてきた。しかも大会が終わればまた、誰もができるわけではない世界へ飛び込み、新たな経験を重ねていく。その特別な“当たり前”に見合う選手となるには、何が何でも勝たなければならない、と言葉にすることで自分自身を追い込んでいた。

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