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「練習中もみんなが藍を見ている」バレー日本代表・高橋藍が五輪後に戦った“重圧”…20歳でイタリア挑戦を決めた理由とは?
posted2021/12/08 11:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Koomi Kim
2年ぶりに有観客で開催されたバレーボールの全日本インカレは、男子は早稲田大の5連覇、女子は東海大の6年ぶりの優勝で幕を閉じた。
準決勝以降、観戦チケットは「完売」とアナウンスされていたが、会場となった大田区総合体育館は想像よりも空席が目立っていた。報道エリアの隣席で、これが初めての大学バレー観戦という編集者が、筑波大と順天堂大の熱戦に「面白かった」「あの選手がすごい」と興奮気味で話した後、ポツリとつぶやく。
「高橋藍、生で見てみたかったですね」
高橋が在籍する日体大は準々決勝で敗れたため、準決勝にはいない。言うまでもなく勝ち進んだチームや選手が強いことは間違いないが、日本代表だからとか、注目を浴びるスター選手だからという理由だけではなく、単純に「見てみたかった」と思わせる魅力や技術が、いまの高橋藍にはある。
まぎれもなく、大会前から主役は高橋だった。
「絶対に行きたかった」イタリア挑戦
全日本インカレの開幕と同日の11月29日、日体大はこの大会後に高橋がイタリア・セリエA、パドヴァへ入団することを発表した。現役の日体大生としてオンライン授業を受けながら、現地の大学で語学も学び、プロバレーボール選手としてプレーする。この新たな挑戦は話題を集めたが、かつて石川祐希が中央大1年時に留学という形でイタリアへ渡った時と比べれば、それほど大きな驚きがあったわけではない。他ならぬ高橋自身が、事あるごとに「海外へ行きたい」「イタリアでプレーしたい」と口にしてきたからだ。
世界選手権の予選を兼ねたアジア選手権の後、秋季リーグに向けて大学の練習に合流した10月。東京五輪での激闘を振り返りながら、これからを語る高橋が「実は」と切り出した。
「インカレが終わったらパドヴァへ行きます。ネーションズリーグが終わった6月頃に2つのクラブ、パドヴァとチステルナ(前ラティーナ)からお話をいただいて。祐希さんからも『行くチャンスがあるなら、大学のうちに(海外へ)行ったほうがいい』と言われていたし、(日本代表男子の新監督フィリップ・)ブランからも『すぐにでも行け、行ったほうがいい』と。自分自身も高校を卒業した時から海外で挑戦したい思いがあったので、絶対に行きたかった。実現するためにどうしたらいいか考えて、むしろ自分から積極的に動きました」