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急逝オリベイラさん、エリクセンやアグエロの引退危機… 欧米で報道される「サッカーと心臓疾患の謎」とは
posted2021/12/08 11:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
J.LEAGUE
湘南ベルマーレのオリベイラさんの訃報を知った時、その数日前に読んだドイツ紙『ベルリン新聞』の記事を思い出した。『フットボールにおける心臓疾患の謎』と題されたもので、11月9日にオンライン上に掲載されると、多くの欧米のメディアがそれをベースに後追いの記事を出している。
なぜなら、そこにはにわかに信じがたい数の事例が列挙されているからだ。
「最近、プロとアマを問わず、尋常ではない数のフットボーラーが(心臓)発作で倒れている」とリードが打たれたその記事は、7月11日から10月15日までに欧州全土で起きた心臓の問題と疑われる発作のリストを掲載。その間、実に23人(選手、指導者、審判、スポーツディレクター)がピッチで倒れているというのだ。平均するとおよそ4日に1人の割合となり、そのうち4人が亡くなっている。
またその期間外では、EURO2020でデンマーク代表のクリスティアン・エリクセン(6月12日)の件や、ラ・リーガでのバルセロナに所属するセルヒオ・アグエロの件(10月30日)が広く知られている。
前者は大会初戦のフィンランド戦の前半終盤に倒れ、周囲の迅速な対応により一命を取り留めた。後者は第12節のアラベス戦の前半終盤に呼吸がうまくできなくなり、ピッチを退いた。どちらも、心臓が正常に動かなくなったことが要因とされ、まだ復帰できていない──2人とも、このまま引退するのではないかと見る向きもある。
そして、11月23日には湘南のオリベイラさんが心不全により自宅で心臓が停止して倒れているところを発見され、同25日にはチャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦でシェリフのアダマ・トラオレが後半に胸を押さえてピッチを後にしている。各国の下部リーグやユーストーナメント、アマチュアも含めると、その数はさらに増えるという。
様々な“憶測”がオンライン上で
この急激に見える事故数の増加を受け、オンライン上には、様々な憶測が流れている。そのごく一部には、新型コロナワクチンとの因果関係を結びつけようとしているものもあるが、それらは医学的根拠のない極端な意見に見える。
米スポーツメディア『ジ・アスレティック』は11月19日、前述のドイツ紙のリストを紹介した後、そうした極端な憶測の危険性について、専門家に訊いている。