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大谷翔平とエンジェルスのチーム改造。FA市場で先発投手陣を鋭意補強し、6年連続負け越しからの脱却なるか? 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2021/11/20 11:00

大谷翔平とエンジェルスのチーム改造。FA市場で先発投手陣を鋭意補強し、6年連続負け越しからの脱却なるか?<Number Web> photograph by Getty Images

エンゼルスと1年2100万ドルの契約を結んだシンダーガード。年俸に見合う働きを見せられるか

 21年オフのFA市場はにぎやかだ。大物投手だけに絞っても、マックス・シャーザー、ジャスティン・ヴァーランダー(アストロズと1年2500万ドルで再契約した)、クレイトン・カーショーといった名前がずらりと並ぶ。

 それ以外にもロビー・レイやケヴィン・ガウスマン、マーカス・ストローマン、さらにはカルロス・ロドン、ジョン・グレイ、菊池雄星などがFA資格者に加わった。もうひとり、エドゥアルド・ロドリゲスという恰好の対象がいたが、こちらはタイガースと早々に契約を結んでしまった(5年総額7700万ドル)。

 エンジェルスが欲しいのは、3人のビッグネームよりもレイとストローマンだろう。ともに5年総額1億3000万ドル前後の金額を用意しなければならないが、チーム強化のためには「贅沢税だけは払いたくない」というアルトゥーロ・モレノ(球団オーナー)の意向にばかり副ってはいられない。

 ただ、レイの古巣ブルージェイズは、喉から手が出る思いで彼と再契約を結びたがっている。ストローマンにしても、21年は33先発で防御率3.02の好成績を残しているだけに引く手あまただろう。

2年で投球2回の投手に2100万ドルの賭け

 と思っていたら、ミナシアンは、手術明けのノア・シンダーガード獲得という荒技に出た。2100万ドルの1年契約という条件はいかにもギャンブルめいた印象を与えるが、29歳のシンダーガードは私も大穴と思っていた。20年3月にトミー・ジョン手術を受けた彼は、21年6月に現場復帰するはずだったのに、右肘の炎症で思うようなピッチングができていない。ここ2シーズンの投球回数は合計わずか2イニングス。

 ただし、潜在能力の高さ(99マイル超えの速球を通算で1200球以上投げている)は衆目の一致するところだ。2016年などはメッツで30試合に先発して183回3分の2を投げ、防御率2.60、奪三振218の素晴らしい成績を残している。

 たぶんエンジェルスは、22年も先発投手6人制を布くことになるだろう。大谷の使い過ぎを回避するのが主眼だが、このシステムが機能すれば、シンダーガードの投球回数も年間130イニングス程度に抑えることができる。これなら故障明けでもなんとかなるだろう、というのがミナシアンの読みではないか。ただ、それならそれで少なくとももうひとり、有力な先発投手を獲得する必要がある。

 いずれにせよ、エンジェルスは金の使い方を考えなくてはならなくなるはずだ。トラウトはまだ30歳だから十分に復活可能と見るが、慢性的な故障を抱えるアンソニー・レンドンやジャスティン・アプトンの処遇は、そろそろ真剣に考えたほうがいいかもしれない。トラウトと大谷につづく大駒のみならず、守備力と機動力もこのチームの課題だ。先発投手がそろわなければ、やや改良されてきたブルペンをさらに充実させなければならなくなる。ミナシアンは、まだしばらく頭の痛い日々を送らざるを得ないのではないか。

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