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「オオタニに残された問題はどこまで…」最強投手シャーザーが明かす《二刀流・大谷翔平への率直な評価》とは
posted2021/11/18 11:25
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph by
Nanae Suzuki/Getty Images
誰もが認めるメジャー最高峰の投手、マックス・シャーザー。今年のオールスターではナ・リーグで自身4度目のスターター(先発)を務め、投手・大谷と投げ合い、そして打者・大谷と対峙した。まずは2球でセカンドゴロに打ち取った、打者・大谷の印象を訊いてみた。
「ハハハ、そんなに多くはないね(笑)。ただ、打席ではいつもよりカッターをしっかり投げないといけない、とは思っていた。完璧に投げ切らないと、長打にされてしまうからね。運よく打ち取れて良かったよ」
両方できるのはクレイジーというしかない
シャーザーが所属するドジャースはDH制のないナ・リーグのため、彼はシーズン中の試合でバットを握ることも多い。
「僕も打席に立つのは大好きなんだ。バッティングをすることで、ピッチャーとしてバランスの取れた状態を保つことができる。ただ、大谷がア・リーグでやっているのは凄いことだ。ピッチングだけでも相当な負担がかかるから、両方できるのはクレイジーというしかない。信じられないほどのアスリートしか、あんなことはできないよ」
彼は中4日で投げ続けるためのコンディションを保つことに人一倍の努力を続けてきた。だからこそ今年の大谷が二刀流での出場を続けていることに驚きを隠さない。
「スターターは、可能な限りフレッシュな状態を保つために、自分のルーティンを持っていなくちゃいけない。僕の場合は登板の合間のウェイトだね。身体に負担をかけることで、肉体をメンテナンスしている。僕はそんな感じだけど、大谷には二刀流を可能にするためのルーティンがあるだろうね。それをシーズン通してやり抜こうとしてるんだから、怪物だよ、ホント。2カ月やそこらじゃない。夏場も越えてシーズン中、コンディションを維持して最高のパフォーマンスを見せることがいかに難しいか、みんな理解していないんだ」
奪三振率の高い大谷に対して「将来はクローザーになるべきだ」という意見がある。つまり、DHとして4、5回打席に立ったあと、最終回はマウンドに上がって試合を締める、というものだ。
「そのシナリオは、僕も耳にしたことがある。でも、大谷は現実にスターターとバッターを両立してるってことを考えてほしいな。スターターを務めながら二刀流をしていることには、とてつもない価値がある。スターターはチームの大黒柱であって、最高の投手なんだ。長いイニングを投げて、勝利をもたらすスターターをどのチームも望んでいる。僕らがイニングを投げれば投げるほど、ブルペンをフレッシュに保つことができるし、その分チームを勢いづかせることができる。これはとても重要なことなんだ」
大谷は二刀流であり続けることは可能なのか
メジャーでは、フィールドプレーヤーが中継ぎとしてマウンドに立つことも珍しくなくなっている。今後、大谷の影響で若いアスリートが二刀流に挑む可能性もある。シャーザーの目に、この状況はどう映っているのだろうか。
「たとえば外野手でも一塁手でも、肩が良ければ短いイニングを投げられるかもしれない。彼らが1、2イニングでも凌いでくれたら、その分ブルペンが休むことができる。トップクラスの中継ぎじゃなくていいし、試合終盤である必要もない。メジャーで1イニングでも投げられる才能と能力がある選手がいるなら、チームには本来ブルペンにいないピッチャーが控えていることになる。チーム戦略の観点から言っても、大学で二刀流だった選手は、重要な中継ぎになる可能性があると思う」