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「打率10割打てば、悩まなくて済む」求道者たる柳町達はホークス外野陣“残り1枠”をつかめるか〈長谷川コーチが“後継者”に指名〉
posted2021/11/18 06:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
今季で現役引退したばかりの長谷川勇也一軍打撃コーチが自身の後継者に指名したのは、24歳の同じ右投左打の外野手だった。
引退試合を終えた数日後、在福テレビ局のスポーツ情報番組に出演した際のこと。「ホークスの中で長谷川2世は誰?」と問われると、ちょっと考え込んでから「柳町」と明言したのだった。
「彼もどちらかというと、いぶし銀タイプ。じっくり球を選んで打っていくスタイルで、ホークスにはいない。しっかりその技術を自分のものにして、9人並ぶ中で個性のある1人になってほしい」
長谷川コーチの言葉に「まさか、僕だとは」
柳町達(たつる)はこの放送日、仙台にいた。その頃、ホークスはまだレギュラーシーズンの最終盤を戦っていた。試合後に千葉へ移動。スマホでSNSを眺めている時、初めて先輩のメッセージを知った。
「まさか、僕だとは」
その言葉が励みになったのか、はたまた気を良くしたのか。柳町はシーズン最終戦となったZOZOマリンスタジアムでのマリーンズ戦で素晴らしい活躍を見せた。
「9番右翼手」でスタメン出場し、2回の第1打席には左中間適時二塁打。そして3回の第2打席、岩下の直球を流し打って左翼席へ持っていった。「最高に気持ちよかった」という一発は嬉しいプロ初本塁打だった。さらに7回にも中前打を放ち、初の3安打猛打賞も達成した。
この日ラストゲームだった工藤公康前監督に勝利を贈り、柳町はビジターだったが自身初のヒーローインタビューも受けた。
「1打席目も2打席目もいい感触で打てました。ダイヤモンド一周は、最高に気持ち良かったです。最後の最後でアピールの場面をもらえて、結果を出せて嬉しい」
続けて「来季は一軍でレギュラーを獲ります。引退した長谷川選手のようなバッターに成長していきたい」と締めくくった。