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プロレスラー永田裕志の“子育て論” 12歳息子のレスリング挑戦を全力応援する理由「痛い思いをしなければ、他人の痛みもわからない」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by本人提供
posted2021/11/18 11:02
新日本プロレスで活躍するプロレスラーの永田裕志と、息子の裕生さん(現在12歳)
レスリングを通じて「人の痛みや人間関係を学んでほしい」
――そういう面はあるかもしれないですね。
永田 でも、レスリングというスポーツを通じて、相手が痛い思いをするから、そういうことはやっちゃいけないとか。自然に学べると思うんですよ。また、チーム、組織の中で自分はどうすればいいのかなど、自分の立ち位置を学んでいけるスポーツでもあると思うんですよ。だから、レスリングを続けていてくれるのはうれしいですし、社会に出た際にもきっと役立つので、勉強に100パーセント青春時代の時間を割くよりは、最低限のことはしっかりやった上で、スポーツを通じて、人の痛みや人間関係を学んでほしいっていうのが、僕の教育方針ですね。
――「こんな選手になってほしい」というより、スポーツを通じて社会性を学んでほしい、と。
永田 僕自身、高校時代まではわがままな性格で、人間関係がなかなかうまくいかなかったんですよ。でも、日本体育大学のレスリング部に入って、厳しい上下関係の中でいろいろ自分のダメなところを直されたことで、その後、新日本プロレスの道場に入ってからもそれが役に立ったので。息子にも、そうやって人間的に成長していってもらいたいですね。
――裕生くんは将来、プロレスラーになりたいという思いもあるようですね。
永田 ちょっとあるみたいですね。ただ、今はまだ小学6年生で、これから中学、高校と進んでいく中で、いろんな現実を知って考えが変わることもあるでしょうし。「甘い世界じゃないぞ」ということは言ってありますね。
息子・裕生くんから父へ一言
――今回、裕生くんにアンケートも取らせていただいたんですけど、「お父さんをどう思うか」という質問に、「IWGPの防衛記録を作ったのはすごいと思う」と答えてましたね。「僕もそれを経験してみたい」とも。
永田 何を言うかと思ったら、そんなことを言ってたんですね。僕がIWGPの防衛記録を作ったのは彼が生まれる前のことですから、実際にその目で見たわけではないんですけど。過去の映像を観たり、情報を知って、そういうふうに思ってくれているというのは、悪い気はしないですね。
――「悪い気はしない」どころじゃないでしょう(笑)。
永田 まあ、うれしいですよ(笑)。
――数年後、本格的に「プロレスラーになりたい」と言ってきたらどうしますか?
永田 プロの世界は厳しいですから。「全日本チャンピオンクラスの強い(アマチュア)レスラーになるまでは難しいぞ」ぐらいのことは言ってますけどね。今の時代、昔ほどプロレス界も狭き門ではなくなってきているかもしれませんけど、本当の意味でプロで通用するのは大変だということは変わらないですし。そういう覚悟があってはじめてできることだと思うので。それでも挑戦したいのであれば、本人の意思を尊重したいとは思っていますけどね。その気になれば、僕より上に行くことなんかすぐですから(笑)。