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「労働でみんな灰色だ」闘う男だけが称賛される炭鉱の街・ボーフム 小野伸二にも辛口だったファンに浅野拓磨は認められるか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/11/09 17:01
移籍後まだゴールのない浅野だが、闘争心溢れそのプレーをボーフムの熱いファンたちも好意的に受け止めている
94分にもホルトマンからのパスをペナルティーエリアの右で受けて、ワントラップから惜しい右足シュートを見せた。疲れが見えるボーフム攻撃陣のなか、浅野にボールが入ると何かが起きそうな雰囲気があった。
結局、試合は延長戦でも勝敗がつかず、PK戦の末にボーフムが勝利を飾ることとなった。ファンとともに次ラウンド進出を喜ぶチームの姿が美しい。浅野も、笑顔で仲間とともに飛び上がって喜びを分かち合っていた。
「タクマはうちにとって非常に重要な選手だ」
試合後、リモートでの記者会見でレイス監督は浅野について次のように答えてくれた。
「タクマはうちにとって非常に重要な選手だ。動きがダイナミックで技術レベルも高い。ただ、筋肉系の問題を少し抱えていたので、今日は意識して休養してもらうことにした。どの選手もいいパフォーマンスを見せてくれているので選手の選択に苦労するが、それはチームにとって素晴らしいことだ。タクマのこれまでには満足しているよ。ボーフムは、彼のプレーでこれからもっとたくさんの喜びを感じることができるだろう」
最後のフレーズは、ドイツ人監督がよく口にするものだ。ファンが喜びを感じるために、選手はファンが求めているプレーを理解しなければならない。
レイス監督はボーフムのファンが何を求めているのかを熟知しているし、それを浅野が表現することができると確信しているようだ。
浅野は、このドイツカップ前にあったフランクフルトとのリーグ戦でも活躍している。ブルームの先制点を見事なスルーパスでアシストし、その後もゴール前へと機敏な動きで何度も出没。得点こそ奪えなかったがチームの攻撃を活性化させ、確かな評価を受けている。
それだけに、ゴールが欲しい。フランクフルト戦も、次のボルシアMG戦もチャンスがありながら決めきれなかった。GKのファインセーブもあったが、正直すぎるシュートだとGKにブロックされやすくなる。
とはいえ、ゴール前でチャンスに絡めているし、貪欲にシュートに持ち込んでいるのも好材料。ボーフムらしく、泥臭く、粘り強く、一工夫加えながらゴールを狙い続けたい。残留争いを勝ち抜くには、浅野をはじめとするFW陣の得点力アップが必要不可欠だ。