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「カラフルだね(笑)。カッコいいよ」新庄剛志の“巨大リストバンド”に、02年ジャイアンツ時代の指揮官が語っていた意外な本音 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2021/10/29 17:02

「カラフルだね(笑)。カッコいいよ」新庄剛志の“巨大リストバンド”に、02年ジャイアンツ時代の指揮官が語っていた意外な本音<Number Web> photograph by Getty Images

2002年、ジャイアンツに所属していた新庄剛志と当時のベイカー監督

コメディ映画も引用

 レッドソックスとのア・リーグ優勝決定シリーズで、先発投手が五回持たずに降板し続けていることについてはこう述べた。

「まるでグランドホッグ・デーみたいだよ。彼ら(先発投手)にあのイニングを乗り越えて欲しいと思っているのに、乗り越えられない。同じ悪夢の繰り返しになっている」

 グランドホッグ・デー=Groundhog Dayというのは、1993年に公開された米映画のこと。春の到来を予想する田舎町の伝統行事を辟易しながら取材する天気キャスターが、行事の当日である2月2日を際限なく繰り返すコメディーは、日本でも『恋はデジャ・ブ』という邦題で公開されたぐらいだから、それなりに興行収入を挙げているが、大ヒットした映画というわけではない。

今季は新庄剛志所属時以来のワールドシリーズ進出

 そんなベイカー監督が、自身初のワールドシリーズ優勝まで「あと一歩」のところにいる。監督歴24年で通算1987勝(1734敗)もしているが、地区優勝を7度も達成しながら、ワールドシリーズ優勝がなく、リーグ優勝も今年を含めて2度しかない。それはいつも、彼の手腕を疑う人々にとっては絶好の「突っ込みどころ」になっている。

 今年、ア・リーグ王者として出場するまで、ベイカー監督が唯一出場したワールドシリーズは、「爪楊枝」の会話を交わした2002年、本塁打王バリー・ボンズや、2000年のナ・リーグ最優秀選手ジェフ・ケント、北海道日本ハムファイターズの次期監督に就任した新庄剛志氏らが中心となった時以来のことだ。

 ベイカー監督率いる同年のジャイアンツは、マイク・トラウトや大谷翔平のMVPパフォーマンスを浪費している今のエンゼルスしか知らない層には信じ難いことだろうけれど、エンゼルスに3勝4敗で苦杯を喫している。ナ・リーグ王者ブレーブスも、当時のエンゼルスとよく似た走攻守まとまった強いチームで、実際、26日の第1戦では2対6で完敗している。

 それでもアストロズが気になるのはきっと、ダッグアウトで爪楊枝をくわえている指揮官の、こんなコメントのせいだろう。

「自分の人生の中で音楽は大きな一部を占めている。自分が必要とするムードや雰囲気を作るための大きな一部なんだ。時にはブルースやジャズで心を落ち着けるか、気分を盛り上げる。今日は2パックの”Picture Me Rollin'”を聴いていたし、地元(ヒューストン)のスリム・サグも聴いた。20年ぐらい前に甥っ子が教えてくれた音楽に、舞い戻ったんだ」

 音楽を聴いて気分を盛り上げたいと思うのは、誰だってあること。昔、よく聴いた音楽を聴き直すこともよくあること。「サイン盗み疑惑」のお陰で悪者扱いされているアストロズに親近感が湧くのは、白人のロック・アーティストやコメディ映画の名を口にしたかと思えば、ヒップホップやラッパーの名も口にする、72歳の指揮官のお陰なのかも知れない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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