JリーグPRESSBACK NUMBER
「医師からは引退勧告もされました」“2度の大ケガ”を味わったFW宮市亮28歳は今…初のJリーグ挑戦で「想像以上にJのレベルは高い」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byY.F.M.
posted2021/10/30 11:04
今年7月に横浜F・マリノスへの加入した宮市亮(28歳)。なぜ新天地に日本を選んだのか、そして初めてのJリーグで何を感じているのか……率直に話してくれた
だが、その後はベンチからも外れる試合が続いている(このインタビューの後、10月24日のセレッソ大阪戦で途中出場)。
状態が気になるところだが、宮市自身はコンディションの問題はなく、初めてのJリーグを楽しんでいると話す。
「コンディションに関してはまったく問題ないです。F・マリノスではこれまでの所属チームと比べても、質・量ともにいい練習ができていますし、あとはケガなく、チャンスが来たときにそれを掴めるように日々頑張っていくだけだというか。F・マリノスにはレベルの高い選手が揃っていて、とくに同じ左ウイングの(前田)大然はいま得点1位ですし、常にゴールをねらえるポジションを取っている彼の動きは外から見て参考にさせてもらっています。
もちろん、チームが(首位川崎フロンターレを追う2位につけ)勝ち点を落とせない状況のなか、自分もそこに貢献したい気持ちは強いです。ただ、あまり欲を出し過ぎずというか、まずはできることをやるだけかなと思っています」
2度のひざの大ケガ「地獄を経験したのかもしれません」
ザンクトパウリ時代は、主に右サイドでプレーした宮市。基本はウイングで、チーム事情でサイドバックやウイングバックで起用されたこともあったが、本人曰く最も好きなのは左のウイング。F・マリノスでもアタッカーとして勝負するつもりだ。
ただ、現在F・マリノスには左を定位置とする得点王争いトップの前田のほか(10月25日時点、18ゴール)、マルコス・ジュニオール、レオ・セアラ、エウベルのブラジル人トリオに加え、19年リーグMVPの仲川輝人や日本代表経験もある杉本健勇ら前線に実力者が揃い、ポジション争いはし烈で出場機会を掴むのは簡単ではない。
それでも、結果を求めて焦ることなく、目の前のことだけに集中できているのは、約10年半の海外でのプレー、その間に長くケガに悩まされたことで精神的なタフさを身につけたからだろうか。宮市の言葉に耳を傾けると、どこか達観の境地に達しているようにも思える。
「ひざの前十字靭帯は切ると、術後3カ月くらいは歩けないですし、リハビリをして歩けるようになってピッチに戻ってもしばらくは自分の体じゃないみたいな感覚で、それを戻していくのって本当に辛いんです。ボールが足につかなかったり感覚を戻す作業も大変で、ケガが治っても復帰にはその倍くらいの時間がかかりますから。まあ、それを2度もやっているんですから客観的に見たら、地獄を経験したのかもしれません。ただ、そんななかメンタル的に成長できたことは間違いないです。
もちろん、ケガはなければない方がいいに決まっています。選手にはいろんなタイプがあると思いますが、僕は若い頃、先のことばかりを考えて日々焦っているようなところがありました。だからこそいまは『欲を出したときが危ない』ということを指針にしています。選手としては、ケガなくコンスタントにプレーできることが理想ですし、チ-ムにとってもそれほど計算できる選手はいないじゃないですか。なので、まずは目の前のことをコツコツやるだけと思っています」
「想像以上にJのレベルは高いです」
28歳でのJリーグデビュー。実際にピッチに立った時間はまだ少ないが、何か感じていることはあるだろうか。9月には若手選手やトップチームで出場機会の少ない選手のアピールの場でもある「Jエリートリーグ」に出場し、2度の警告で退場になったこともあった。