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「清原さんは真っ直ぐで。イチローさんは持っているもの全部出して…」引退・松坂大輔が語っていた“天才たちの抑え方”
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/10/25 17:15
日米通算で61打席の対戦があった松坂大輔とイチロー
「何を言われようが…」16年プエルトリコ冬季リーグ中に語ったこと
実はそういった「外野の声」について、どう思っているのか? と訊いたことがある。
それは2016年の冬、すでに福岡ソフトバンクで日本プロ野球復帰を果たしていた彼が、右肩手術からの復活を目指してプエルトリコの冬季リーグで投げていた時のことだ。赤茶色に黄色の文字で「Gigantes(スペイン語でジャイアンツの意)」と胸に描かれたユニフォームに身を包んだ彼は、ある日の試合後、こう言っている。
「誰に何を言われようが、自分を信じて進むだけですから」
コロンバスで話した時と同じように、涼しい笑顔の中に突き刺すような視線があった。『僕の言っている意味、分かりますか?』。
「今、ノーワインドアップで2シームを多めに投げているんですけど、たとえばワインドアップには自分なりの思い入れがあるし、真っ直ぐ……4シームで勝負したいという気持ちは今でも、持ってます。でも、何かを変える時には思い切ったことが必要。投げながらストレスを感じるかも知れないけど、うまく変われるきっかけを掴めたらいい。今の自分の状態を改善していく中で何がきっかけになるか分からないので、とにかく変えて行こうと、いい方向に変えられるきっかけになればいいなと思って」
松坂大輔が、松坂大輔であるために
そのために彼は他の誰よりも多く、他の誰よりも長く、投げ続けた。その姿が他人にどう見えようが、誰に何を言われようが、マイナーリーグやプエルトリコの小さな野球場で、彼はひたすら投げ続けた。
松坂大輔が、松坂大輔であるために――。
だから、彼は「本当は投げたくなかった」のに、「もうこれ以上、だめな姿は見せたくない」と思っていたはずなのに、「最後の最後、全部さらけ出して見てもらおう」と考え、引退試合の最後のマウンドに立ったのではないか。
10月19日の「最後の5球」。
今のベストを尽くした、118キロ。ありのままの速球。
松坂大輔は最後までずっと、投げることにこだわって、現役を全うした――。