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1部復帰を目指すシャルケで早くも不可欠な存在に ブンデス初挑戦の板倉滉の“判断力”と落ち着きがすごい
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/10/23 17:01
今季よりシャルケでプレーする板倉。1年での1部復帰に向けてハイパフィーマンスを続けている
やはり、自分のプレーだけではなく周りに影響を与えられる選手は貴重だ。
例えば、ハノーファー戦の前半。相手陣内での味方のスローインの場面で、ティアウと板倉のポジションのラインが一緒になったときがあった。ボールを失った際にスペースをすぐにケアするためには、ひとりが少し前のポジションを取るべきところだ。
リードヘーゲーナーが思わず叫んだ。
「高さがかぶっている!」
次の瞬間、板倉はティアウを前目のポジションに促した。状況を把握して、スマートに対応してみせたのだ。
“タラレバ”を言っても仕方がないが、シャルケが昨シーズンに板倉を補強していたら、2部降格を避けることができたのでは? と思ってしまった。
移動による疲労が懸念も「代表選手の宿命ですから」
試合は、後半のアディショナルタイムにカミンスキが決勝ゴールをあげて1-0で勝利。喜びの輪に板倉も走り、仲間とハイタッチをかわす。シャルケファンの声がこだまする中、最後まで落ち着いて最終ラインを統率した板倉は、試合終了のホイッスルを聞くと両手を広げて吠え、GKやDFと抱き合った。
この日はミックスゾーンでの取材が禁止されていたために、本人に直接話を聞くことはできなかったが、広報を通して板倉の力強いコメントが送られてきた。
「相手にチャンスを与えずにできたと思います。最後に点が入り、勝ててよかったです。(代表戦での)移動は大変でしたけど、それは代表選手の宿命ですから」
シャルケのグラモツィス監督は、チームの確かな成長に手応えを感じている。
「強敵相手に勝点3を取ることができてとても嬉しい。まず観客で一杯のスタジアムで、こうしてまた試合をすることができたことが素晴らしい。ファンの素晴らしいサポートに感謝したい。彼らに勝利を届けることができて、なおさら嬉しいよ。今日は最初からいいプレーをすることができた。これまでは相手にリズムを譲り渡す時間帯があったのだが、今日はほとんどチャンスを与えなかった。意図したビルドアップから、多くのチャンスを作り出すことができた。今日の勝利で自信を深めてくれることを祈っている」
シャルケは、第10節を終えて6勝1分3敗。1位のザンクトパウリと勝点3差の3位につけている。チームを支える屋台骨、板倉の両肩にかかる期待は大きい。ロイヤルブルー(シャルケのチームカラー)を1部へ導く存在となれるだろうか。