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「巨人びいき」批判があふれた亀井善行のWBC選出、原監督が明かしていた“本当の理由”「イチローに何かあった場合…」
posted2021/10/23 11:04
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
JIJI PRESS
「もっといい選手がいるだろう」
「原の巨人選手びいきで日本代表を選ぶな」
「なんで亀井が選ばれているんだ」
こんな言葉はまだまだ生やさしいものだった。ネットには誹謗中傷する言葉が並び、今ならAIチェックでヤフーのコメント欄が閉鎖に追い込まれてしまっていたかもしれないような、罵詈雑言が溢れていた。
2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表メンバーが発表されると、ニュースサイトのコメント欄にはもちろん連覇を期待する応援コメントが溢れたが、その一方で巨人・亀井善行外野手の代表入りを批判する口汚い言葉がこれでもかというほど書き込まれた。
亀井「実績のない自分が行くのは辛かったです」
「正直、いまだから言えますけど選ばれたくなかった」
10月21日。今季限りでの現役引退を発表した亀井は、引退発表の記者会見であのWBCのことを聞かれると、こう振り返ったという。
「実績もないですし、実績のない自分が行くのは辛かったですし、他にも実績のある人が落選しているのを見て辛い思いをしました」
当時の亀井はプロ5年目。巨人でもレギュラーポジションを確保していたわけではなく、大会前年の2008年の年間成績は96試合の出場で打率2割6分8厘、本塁打5本の23打点と、まさに控え選手の数字でしかなかった。
一方、他チームの外野手に目を向ければ打率3割2分2厘でパ・リーグの首位打者に輝いたことのある当時中日の和田一浩外野手、シーズン40本塁打の記録を持つ阪神の金本知憲外野手や05年に打率3割2分4厘を残していた横浜の金城龍彦外野手や阪神のスピードスター・赤星憲広外野手など数字的には亀井を上回る選手が大勢いたのも確かだった。
ただこのときの日本代表を率いた巨人・原辰徳監督にとっては、熟慮に熟慮を重ねた結果、亀井でなければならない理由があったのである。