プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「巨人びいき」批判があふれた亀井善行のWBC選出、原監督が明かしていた“本当の理由”「イチローに何かあった場合…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/10/23 11:04
10月21日に引退記者会見に臨んだ巨人・亀井善行。時折、笑顔も見せた
控え選手は練習すらもままならない
大会が行われる3月は、プロ野球開幕直前で選手にとってはシーズンに向けた最後の調整時期でもある。代表メンバーに選ばれると、例年より早めに身体を作り、例年より早めにコンディションを上げていかなければならない。しかも最終調整として必要ならば打ち込みなどを行なって仕上げていくが、最後は渡米しての試合があるために、そういう練習をする時間と場所に制約がかかる。
大会本部が設定した練習しかできないので、シーズンに向けての練習不足を覚悟をしなければならないのである。
レギュラーとして試合に出られる選手はまだいい。控え選手は試合にも出られないし、練習すらも先発メンバーが優先されて、1日のバッティング練習も3人で回して10分などというケースも出てくる。
原監督「特に大変なのはイチローの控えなんだ」
「だから問題なのは3人の控えなんだけど、特に大変なのはイチローの控えなんだ。基本的にイチローは交代させる場面がない。多分、約1カ月の間、試合にもほとんど出られないし、練習時間の制約も大きい。そういう役回りになるのは分かっていて、他のチームのレギュラー選手も嫌がったし、それをムリやり呼ぶことはできないのも分かっていた」
大会後に原監督から聞いた裏事情だった。
要は日本代表という名誉の代わりに、開幕直前までほとんど自分を捨てて、ただひたすら「イチローに何かあった場合のためにベンチに座っている」ことが役割になる。
だからこそ、原監督は自分が指揮するチームの亀井を選んだ。
「亀井は守れるから。おそらくバッティングでイチローに代打を送ることはない。休ませるとしたら最後の守備。ならばきっちり守れる亀井が最善の選択だと思っている」
それが理由だったのである。
本番が始まると侍ジャパンの柱と頼んだイチローは絶不調でハラハラさせたが、結果的に原監督は先発から外すことも、代打を送ることもなかった。そして亀井は日本での第1ラウンドの中国戦では代走からレフトの守備固めに入り、米国に渡った第2ラウンドでは同ラウンド2度目の韓国戦で村田修一内野手が安打を打った際に故障を起こしたため、その代走から左翼に入り、6回に左前安打と8回に送りバントを決めたのが記録に残る打席だった。