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「巨人びいき」批判があふれた亀井善行のWBC選出、原監督が明かしていた“本当の理由”「イチローに何かあった場合…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/10/23 11:04
10月21日に引退記者会見に臨んだ巨人・亀井善行。時折、笑顔も見せた
亀井「声出しや雑用で貢献したいと思っていきました」
「本当にすごい選手ばかり揃っていたので、自分だけ違うなと思っていた。辛かったです。試合では貢献できないかもしれないですけど、選ばれたからには、選ばれなかった人たちのためにも、声出しだったり、雑用だったりで貢献したいと思っていきました」
亀井は振り返った。
そうしてチームを陰から支えながら準決勝の米国戦で9回に左翼の守備固めに入ったのが最後の出場で、決勝戦では出番はなかった。
それが亀井のWBCで残した足跡だった。
ただ亀井自身は様々な罵詈雑言を浴び、そのチームに選ばれたことを辛く思ったが、それでもかけがえのないものを手に日本に戻ってきたのも事実である。
代表が集合するとイチローのキャッチボールの相手に指名され、練習をつぶさに見ることができた。そのイチローが亀井を評して「いい選手ですね。守備もバッティングも。チームにいてくれたら助かる選手ですね」と原監督に語っていたということを伝え聞いた。
原監督は何度も「困ったときには亀ちゃんがいる」
「偉大な先輩から直接ではないですけど、そう言っていただけて凄く嬉しかったですし、エネルギーをもらったというか、自信をもらったという気持ちでした」
その自信を糧に2009年のシーズンでは打率2割9分、25本塁打、71打点とキャリアハイの成績を残して、あの罵詈雑言を結果で封じ込んで見せた。
「結果として世界一を取れたことで自分に力をもらえた。その年に初めて規定打席にもいったし、ゴールデングラブ賞も獲らせてもらいました。いい経験になった。いま思い返せばそういう風に思います」
引退会見で亀井は自身のターニングポイントとなった2009年をこう振り返った。
ケガに泣いた野球人生だったかもしれない。
そのケガのためについにレギュラー選手となることはできなかったが、あのWBCと同じようにチームにとっては守備でも打撃でも欠かせぬ存在として過ごした17年間だった。
「困ったときには亀ちゃんがいる」
原監督から何度も聞いた言葉だったし、引退会見で改めて原監督は亀井のことをこう評した。
「巨人においての守り神という存在だった」
まさにそれが亀井善行という選手の価値である。
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