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難病と闘うオリックス西浦颯大(22)早すぎる引退「ずっと、プロ野球選手が将来の夢」恩師・馬淵監督も惜しがる才能
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2021/09/30 11:06
9月28日、ウエスタン・リーグ広島戦で引退試合を行った西浦颯大。最終回、1球限りの出場となったが、センターの守備についた
引退試合を見届けにきた西浦の担当スカウト、柳川浩二(現在は大阪シティドーム事業本部運営課)は、こう言って目を潤ませた。
「せめてあと10年……。ほんまに“これから”っていう選手やったんでねえ」
柳川が西浦を初めて見たのは高校2年の春だった。たまたま1学年上の選手を見るために練習を訪れたところ、目に留まったのが西浦だった。
「『キレーなスイングするなー!』というのが最初のインパクトでした。打ち損じが少なく、しっかりと芯で捉えてパンパンパンパン打っていたのが印象的でした」
その後、2年夏の甲子園で満塁本塁打を放つなど、勝負強さもアピールした。柳川には、プロの世界でも走攻守すべてで力を発揮し、チームの中心選手となる姿が明確にイメージできていた。
「守備、肩、足はすでに一軍レベルで使えると思っていました。打撃も、金属から木になっても、この子は対応できるなと。一軍と二軍のバッターの差っていうのは、甘い球を一発で仕留められるかどうか。西浦の場合は、高校生でしたけど、その能力を持っていた。プロでは長距離打者ではないけど、ホームラン10本、打率は3割超えるぐらいの、安打を量産するバッターになってくれるかなと思ってたんですよね」
引退試合の2日前、久しぶりに西浦に会ったという。
「なんて声をかけてええかわからなくて……。ほんとに、代われるもんやったら代わってやりたい。でも、本人はもう『次の人生に向けて頑張る』って、結構スッキリした感じでした。しゃべっていたら僕のほうが泣きそうになるぐらいでした」