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「もう時間がない」「助けて!」…東京パラのアフガン選手が体験した“48時間の脱出劇”〈史上最大の救出作戦〉
text by
田村崇仁Takahito Tamura
photograph byAFLO
posted2021/10/01 17:03
アフガニスタンのパラ代表2選手が閉会式を並んで歩く。出場までには“壮絶なドラマ”があった
ラスーリは陸上男子走り幅跳び(上肢障害T47)で出場13人中、最下位だったが、自己ベストをマーク。ABCによると「世界中の人々がわれわれの声を聞いてくれた」と感謝した。生まれつき腕に障害があるフダダディはテコンドー女子49kg級に出場し、敗者復活1回戦でウクライナ選手に敗れた。それでも奇跡的ともいえる大会出場に「言葉で表現できない気持ち」と満足感を漂わせた。一方でアフガンに残した両親は「不安定な状況に置かれている」と心配も口にした。
9月5日の閉会式で2選手はアフガン国旗にちなんだ緑と赤の服を着て行進し、笑顔で小さくガッツポーズする場面もあった。大会後はフランスのマラシネアヌ・スポーツ担当相が2選手を受け入れる方針を明らかにしたが、難民認定の手続きや家族の動向を含めてまだ不透明な部分も残る。
「恐怖政治」に脅えるスポーツ選手は彼らだけでない
タリバンのムチ打ちによる「恐怖政治」に脅える市民やスポーツ選手は彼らだけでない。東京五輪でアフガン選手団唯一の女性として開会式で旗手を務めた陸上のキミア・ユソフィ選手は、既に隣国イランに脱出している。
今回の救出作戦は、IPCが参加国拡大へ紛争地域や途上国の支援に取り組み、人道活動を展開する非政府組織(NGO)と関係も構築してきたことで実現した背景もある。パーソンズ会長は「勇敢な2人には大会後もサポートを惜しまない」と訴えた。混沌とした分断の時代、今回生まれた国際支援の輪が今後もさらに求められそうだ。