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「石川祐希、やっぱりすごいわ」満身創痍のアジア選手権で見せた圧倒的な存在感…でも「まだまだ実力不足」と自己評価が厳しい理由
posted2021/09/23 11:03
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Takahisa Hirano
うわー、と何ともまぬけな声が出た。しかも一度にとどまらず、何度も。その後決まって、マスクの中でつぶやく。
「石川祐希、やっぱりすごいわ」
何を今さら。そんな反論も承知のうえで、なぜ改めて「すごい」のか。
2019年以来、日本では2年ぶりとなる有観客での国際試合となったアジア選手権(9月12〜19日)。エースとして、キャプテンとして、石川の存在は圧倒的だった。
29年ぶりにベスト8進出を果たした東京五輪からまだ2カ月も経っていない。五輪にピークを合わせてきたことを考えれば、コンディションもモチベーションもベストとはお世辞にも言えず、実際、石川も大会前の合宿で腰を負傷したことで、2戦目まで出場を見合わせた。
しかも8日間で7試合というハードスケジュール。3連戦後に休息日を挟んで、準決勝進出をかけた順位決定予備戦で中国、オーストラリアと対戦することを考えれば、おそらく3戦目も出てこないだろう――そんな大方の予想に反し、3戦目のインド戦のスターティングメンバーには石川の名前があった。
選手紹介で一番最初に「キャプテン、ナンバー14、ユウキイシカワ!」と告げられると、“声を出さないように”と言われていた観客たちもその興奮が抑えきれなかったのか、会場がどよめいた。
試合に入っても、すぐに驚かされた。腰への不安を感じさせず、ごく当たり前にスパイクを決め、パスや二段トスの精度も高く、たとえ格下と言われる相手だろうと、圧倒的な強さを発揮する。わずか1時間14分のストレート勝ち。貫禄すら漂わせる勝利であると同時に、貪欲に勝利を求めるキャプテンとしての姿勢を見せつけた。
だからこそ、あえて聞いてみた。その前夜、石川不在の日本代表が、インド同様に格下であるはずのバーレーンを相手に1セット失ったことをどう捉えるか。
石川の答えは明確、かつ的確だった。