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「ユーキは逸材。でも、タツの成長も大したものだよ」石川祐希を育てたイタリア熱血漢が25歳大塚達宣の未来を予言「タツは自分の道を見つけた」
posted2025/12/13 11:03
石川祐希を擁するペルージャをホームに迎えたミラノ大塚達宣。石川が欠場したことで日本人対決は叶わなかったが、試合後に言葉をかわした
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弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Takashi Yuge
「ペルージャ、強えなあ」と大塚達宣はつぶやいた。
「大塚選手は今季のミラノの中心選手になっている」と石川祐希は看破する。
イタリアで戦う2人の日本男子の“今”を観た。
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12月7日、男子バレーのセリエA第10節が行われ、日本代表OH大塚を擁するミラノはリーグ首位戦線をひた走るペルージャをホームに迎え撃った。11月のリーグ戦5試合で4勝1敗と好調のミラノだったが、欧州屈指の強豪相手にセットカウント0-3の完敗を喫した。
ペルージャの主戦OHの一人である日本代表主将、石川は左膝の故障明けでコートには入らず。戦わずして日本人対決を制した形だが、年内に大きな挑戦を控える。
隙あらば下剋上を窺う中堅クラブのミラノと常勝を義務付けられた昨季の欧州王者ペルージャ、それぞれのチームで2年目を迎えた日本代表2人は、各々の立場を変化させている。
大塚を狙う王者ペルージャ
試合は、選手個々の能力で上回るペルージャが序盤から多彩なサーブで崩し、11本のブロックで圧倒。3セットを25-10、25-19、25-19と危なげない試合運びで、現地紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が「ペルージャによる(試合時間)73分間のバレー・レッスン」と評したほどの完勝だった。
だが、完敗にあっても先発フル出場した大塚は、ホームアリーナ「アリアンツ・クラウド」で存在感を示した。
ペルージャのブロックに苦しみながらもチームで2番目の8ポイントを挙げ、サーブレシーブは誰より多い26回を記録した。チームの得点源はベルギー代表OPフェレ・レゲルスだが、今季開幕からスタメンの座を譲らない大塚はれっきとしたミラノの攻守の柱だ。
セリエA挑戦2年目の大塚は、スパイクやサーブでのフルスイングやパイプ攻撃への入りに迷いがなくなった。言葉に慣れ、イタリア流ジェスチャーにも馴染み、順応が進む。
ペルージャの狙いはサーブの標的を大塚に絞り、攻撃参加を抑えることだった。大塚を狙うことは今季セリエAにおけるミラノ攻略法の基本といえるかもしれない。
だが、両腕に強烈なサーブをくらい続けている当人は、ケロリとした顔で言うのだ。
「狙われることは気にならないです。僕はむしろレシーブしてリズム作っていくタイプなんで」
受けて、拾って、大塚の195cmの体躯が大きなバネのように弾けてボールを追う。2セット目中盤のラリーでは3度目のハイセットを打ち切ってポイントを上げた。大塚の好プレーに「ミラノ!ミラノ!」と、5195人の観衆で埋まったアリーナ全体が沸き立つ。
3セット目も追う展開になり、レフトから対角に打ち込むと口を大きく開けて吠えた。イタリアの観客はタツのような熱い男を愛さずにはいられない。


