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悪童と呼ばれた33歳クーパーってどんな人? “しょうもない”イタズラ伝説とピッチで輝く“ひらめき”《ラグビー2部にも大物》
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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko
photograph byGetty Images
posted2021/09/17 17:00
サヨナラPGを決め、W杯王者・南アフリカ撃破に貢献したSOクウェイド・クーパー。第4節(18日)も「10番」を託された
あれは昨シーズンのこと。花園第1グラウンドに隣接する練習グラウンドの芝の上で、太くて大きな車輪のドでかい自転車を乗り回し、管理人を激怒させた。子飼いのジョシュア・ノーラを、じゃれあっているうちに絞め落としたこともある。予測不能の天才的なプレーと歩調を合わせるように、性格も自由奔放。大阪弁で言う「しょうもない」ちょっかいやイタズラで、時に周囲を困らせる。
バリバリのオーストラリア代表だったころに、代表首脳陣を「保守的で退屈なラグビー」と痛烈に批判して罰金を科されたり、とにかく「悪童」のイメージが強かった。
正面健司「ラグビーはものすごくまじめ」
もちろん、やんちゃな姿はクーパーの一部分でしかない。
昨季で現役を引退し、現在は自家焙煎をしたコーヒー豆をネット販売する元日本代表の正面健司さんは「ラグビーはものすごくまじめ。どんな練習でも向上心を持って取り組んでいた」と、近鉄で見た実像を振り返った。
ミーティングでの発言、グラウンドに出る前の準備、居残り練習、トレーニング量、どれを取ってもチームの模範になる存在だという。試合前夜のストイックなルーティンも、メンバーの間で評判だった。人気のない午後9時すぎにウエートトレーニングルームに1人でぶらっと姿を見せ、黙々と汗を流して、翌日の一戦に備えるそうだ。
名手が与えたチームへの影響は計り知れない。ひらめきのままにプレーする司令塔のパスやキックに反応しようと、バックス陣は必死になった。動きを読んで走り込めなければ、ピッチ場でカミナリを落とされる。試合後も呼び出される。戦術やシステムを遵守しがちだったチームに、型どおりでは勝てないと教え込んだ。
名前の頭文字を取って「DC」の愛称で親しまれた元ニュージーランド代表のダン・カーターは、低迷していた神戸製鋼に知と熱と技を注入して、18年シーズンの復活優勝に導いた。近鉄の「QC(Quade Cooper)」は、人格者の「DC」とは振る舞いが異なるものの、同じくチームメイトにプラスαをもたらす存在なのだ。