中野は、まだクラブでスタメンの座を奪い返せていない。だが、彼の精神状況は明らかに次のフェーズに差し掛かっている。

「プロになって自分の立場が明確になったので、もう『高校生だから』とは思われないですし、プロの一員として競争に勝っていかないといけない。その覚悟はできたし、割り切ることができました。それにだんだん東京五輪のピッチに立つことをイメージできなかった自分に悔しさを感じるようになりました。だからこそ、次はあの輪の中に僕が入った時に『貢献できるのか？』と問われたら『できます』と言えるようにしないといけない」

　中野が言う「次」とはパリ五輪であり、その先にあるA代表だ。そのためにまずはチーム内の競争に打ち勝ち、1つ1つ積み重ねていくこと以外に道はない。

「徐々に今の立場に楽しみを見いだせています。僕に足りないものをもっと成長させて、あるものをもっともっと磨いていく。この世代で『いないと困る』と思ってもらえる選手にならないといけないと思っています」

　中野の話を聞いて、改めて世界大会に出場すること、そのメンバー選考に絡むことの重要性を感じることができた。厳しい競争のなかでも「次こそは」と具体的な目標に向けてモチベーションを保ち続ける。その大切さを現時点で知った中野は、それを体現し、パリ五輪世代の仲間たちに示さないといけない。

「五輪にかける思いは強いです」

©︎Takahito Ando

　東京五輪のよそ者からパリ五輪の主役へ――日本サッカーにとって必要不可欠な存在となるべく、18歳の目は真っ直ぐに未来を見つめている。

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