“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“飛び級”U-24で痛感した久保建英、田中碧らとの“違い”とは? 24年パリ五輪を目指すサガン鳥栖の高校生・中野伸哉のリスタート
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/09/10 11:01
U-24代表合宿に参加したことで、現在地を把握できたというサガン鳥栖DF中野伸哉(18歳)。パリ五輪出場を目指して飛躍を誓った
そもそも、中野は負けず嫌いな性格だった。
東京五輪の落選は世代を飛び超える抜擢だったとはいえ、悔しいという思いを、自分に嘘をついて封じ込めていたのではないだろうか。そこから歯車が噛み合わなくなり、クラブユース選手権後に発表予定だった『プロ契約』にも「ここで発表して周りはどう思うのだろうと考えました」と自信を失った。
「(鳥栖で)スタメンを外れたときは、その事実を受け入れられなかった自分がいました。でもその一方で、久保選手ら同世代(パリ世代)と比較をされているのに、自分の肌感覚では何もできなかった現実もあって、どんどん自分が納得するようなプレーが出来なくなっていきました。『やらなきゃ』ともがけばもがくほど、どんどん心と体が離れていくような感覚というか」
これまでは努力をすればそれなりに結果がついてきた。しかし、現実を突きつけられたことで、それが初めての大きな挫折だと知った。
高3でプロ契約、18歳のリスタート
自問自答を繰り返す日々――そこで18歳が行き着いたのが、「また1からやっていこう」という答えだった。つまり、中野にとって「プロ契約」は“スタート”ではなく、“リスタート”だったのだ。
そう思えた瞬間、視界は開けた。7月30日にトップチーム昇格が正式決定すると、ベンチに座る自分を受け入れ、学びの姿勢をより強めてサッカーを向き合った。
「試合に出られない悔しさを学ぶことができた。それにユースから一緒の(DF大畑)歩夢くんもパリ五輪世代ですし、凄く大切なライバル。仕掛けてのクロスの質、前への推進力は高い。チームが必要としているのは歩夢くんだなと自分でも思っています。でも、負けたくない気持ちは当然あるし、スタメンで試合に出場したい。その中で切磋琢磨できることは大きいと思います」