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3歳で全盲も「カズを“見る”のは大好きだった」ブラジルのブラインドサッカー初代10番が語る《相手の“聴覚すら奪う”浮き球パス》の極意とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2021/09/04 11:02
5人制のブラインドサッカーでパラリンピック4連覇、いまだ無敗を誇るブラジル。その強さの源とは?
MS:まず、我々ブラジル人がとにかくフットボールが好きで、目が見えなくなったくらいではボールを蹴るのを諦めないことだろうね。
全国各地にブラインドサッカーを愛する人が大勢おり、盲学校や障害者のためのスポーツクラブでプレーする環境が整っている。競技人口は、2000人くらいいるんじゃないかな。
トップ選手になると国、州、障害者のためのスポーツ団体などから強化費が出るので、他に仕事を持たなくても競技に専念できる。
サンパウロに代表チーム専用の練習施設があり、重要な国際大会の前にはここで長期合宿を張るんだ。
「パラリンピックの試合がテレビで中継されるなんて」
――東京大会でも、ブラジルは4戦全勝で決勝へ進出。9月4日の決勝で、5連覇をかけてアルゼンチンと対戦します。今のチームは無敵とも思えますが、まだ改善すべき点はあるのでしょうか?
MS:もちろんあるさ。ブラジル選手の最大の長所はドリブルがうまいことだが、パスには改良の余地がある。練習を通じて連携を高めれば、もっと強くなる。守備力も、さらに向上できる。限界などないんだ。
――草分けの選手の1人として、この競技がこれほど注目される日が来ると思っていましたか?
MS:いや、全く夢のようだ。パラリンピックの試合がテレビで中継されるなんて、嬉しくて涙が出る。そして、君のような外国メディアまで私を取材してくれる。本当にありがたい。
――いえいえ、とんでもない。日本代表についても論評していただけるでしょうか?
MS:これまで、日本代表の試合を何度も観戦している。以前に比べて個人能力が劇的に向上し、連携も高まった。でも、ブラジル戦では相手をリスペクトしすぎて積極性が少し足りなかった。
今大会の成績を土台として継続的に強化したら、フットボールと同様、さらに上のレベルに到達できる。
――障害者がスポーツをすることの意義をどう考えますか?