猛牛のささやきBACK NUMBER
甲子園中止→プロ初球ホームラン! “末恐ろしい”ルーキー来田涼斗、“出場辞退”球児へエール「その先の人生のほうが長い」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/08/28 11:02
高卒新人としては史上初となる初打席初球ホームランを放ったオリックス来田涼斗
しかもそれだけでは終わらない。2、3打席目にもヒットを放ち猛打賞。そして初盗塁まで決めた。「トリプルスリー」を目標に掲げるのもだてではない。
初もの尽くしの1日の最後は、初のヒーローインタビューで締めくくった。
「監督、コーチから思い切っていけと言われたので、初球から思い切ってバットを振っていきました。うまく当たってくれて、飛んでいってくれました」とインタビューも笑顔でそつなくこなす。
最後にファンへのメッセージを求められると、サッと帽子を取って背筋を伸ばした。
「兵庫県神戸市から来ました来田です。よろしくお願いします」
爽やかな風が、遠く離れた釧路から本拠地・関西まで届いたような気がした。
中嶋監督も評価する「思い切りのよさ」
東京五輪による中断期間を挟み、後半戦も一軍で出場を続けており、8試合に出場して27打数8安打、打率.296(8月27日時点)。これまで、下位の順位がほぼ確定したシーズン終盤に高卒1年目の選手が一軍を経験することはあったが、チームが25年ぶりの優勝に向けて首位をひた走る中での、高卒ルーキー野手の起用は異例だ。
外野はレフト・吉田正尚、センター・福田周平、ライト・杉本裕太郎がほぼ固定されていたため、後半戦はDHでの出場が多くなっているが、それでも使ってみたいと思わせるものが来田にはあるのだろう。中嶋聡監督は言う。
「もちろん弱点もあるとは思うんですけど、思い切りのよさというか、振っていけるところがいい。こちらは『思い切っていけ』って思いますし、その通りにいってくれているのが非常にいいですね。それに、来田が打ったら、(高卒2年目の)紅林(弘太郎)も打たなきゃいけなくなっちゃうから。『もう世代交代させるぞ』って言っといたからね(笑)」
プロ初打席も含め、来田は一軍でも「緊張しない」と言うから驚かされる。
「もともと緊張するタイプではないので。自分のペースでやっているだけです」