田原騎手に叱咤され、ペースアップする先頭グループに必死に食らいついたテイオーは、先団へと進出。続く4コーナーでは、先頭に並びかけようとするビワハヤヒデの直後につけた。ほんの数分前までは、起こるはずがないと思われたシーンが現実味を帯びはじめ、歓声が再び上がる中、レースは最後の直線勝負を迎えた。

　直線に入り、坂下で単独先頭に立ったのはビワハヤヒデ。同期のウイニングチケットは後退し、先輩古馬に対しても「来れるものなら来てみろ」と言わんばかりに、そこからジワジワと差を広げはじめる。

　やっぱり、ビワハヤヒデが強いのか……。

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　そう思った瞬間。ただ一頭、その背後まで迫ってくる馬がいた。テイオーだった。

　テイオーと共にジャパンカップを制した岡部騎手は、その強さを、百も承知のはずである。しかし、岡部騎手はもちろん、レースを見ていたファンの想像をはるかに超える底力を、テイオーは発揮。自慢の大きなストライドが蘇り、残り100mの標識でビワハヤヒデに並びかけると、叩き合いを制してすぐに半馬身のリードをとり、真っ先に栄光のゴールを駆け抜けたのである。

競馬の常識を覆す、中363日でのGⅠ制覇

　またしても、年末の中山に起きた奇跡。競馬の常識を覆す、中363日でのGⅠ制覇。あり得ないと思われた光景が、今まさに目の前で現実となり、驚きと喜びが入り交じるように大歓声が沸き起こる。多くのファンが涙し、レース後のインタビューで、田原騎手自身も涙を流した。

　──日本競馬史に燦然と輝く、奇跡の復活劇が完結した瞬間だった。

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