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「逃げ馬&前走1番人気◎」を証明した女傑…500万の抽選馬“イソノルーブル”がオークスで高額馬を打ち破るまで
posted2021/09/04 17:00
text by
小川隆行Takayuki Ogawa
photograph by
フォトチェスナット
落鉄により片足が裸足のまま桜花賞を走った1番人気馬は5着に敗退。レース後、「なぜそのまま走らせたのだ!」と抗議が殺到した。人気が急落した次走オークスではハナを切って逃げ切り勝利、見事に雪辱を果たした。彼女の名はイソノルーブル。わずか500万円の安馬ながら、高額の強豪牝馬を打ち破る姿にファンは魅了された。
競馬を愛する執筆者たちが、90年代前半の名馬&名レースを記した『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)から一部を抜粋して紹介する。〈イソノルーブル編/オグリキャップ編を読む〉。
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簡単かつ高回収率の「逃げ馬狙い」「前走1番人気」
馬券には「長い目で儲けられる戦術」が存在する。その最たるものこそ「逃げ馬」狙いだ。
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2020年~21年5月16日までの4660レースにおいて、逃げ馬は916頭が勝っている。勝率は18・6%、単勝回収率は208%。的中率はおよそ5回に1回だが元金は倍になる。逃げた馬の単勝平均配当は1120円。意外に高い勝率の割に単勝支持率は低い。
これぞ、遥か昔から変わりのない「逃げ馬狙い戦術」であるが、問題が一つ。「逃げる」と思って狙った馬が確実にハナを切る保証など、どこにもない。時にノーマークの馬が逃げたりするから完璧とはいかないのだ。
もう一つ、前走1番人気に注目するのも有効な戦術だ。前と同じ期間で「1番人気で4着以下」に敗れた馬は1428頭。このうち218頭が次走を勝っており、573頭が3着以内。勝率15・3%、複勝率40%。5頭に2頭が馬券になっている(ただし単勝回収率は69%、複勝回収率は77%)。
これを「芝GⅠで1番人気に支持されて2着以下に敗れた馬」とすると、11年以降の過去11年で31頭が勝っており57頭が3着以内。勝率27%、複勝率50%、単勝回収率は98%に跳ね上がる。
馬券本でもないのに、このようなデータをマクラとしたのは、1頭の馬がこの戦術に気づかせてくれたからだ。
イソノルーブル。1番人気の桜花賞を逃げて5着に敗れ、続くオークスを4番人気で勝った女傑である。
わずか500万円の抽選馬が高馬を破る
新馬戦、500万下、ラジオたんぱ3歳牝馬S、エルフィンS、報知杯4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)と土つかずの5連勝。5戦における2着馬との合計着差は13馬身。桜花賞では1番人気に支持された。