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〈秘話〉有馬出走直前「おい、お前オグリキャップやからな」 武豊の一喝が“芦毛のアイドル”を伝説の名馬にした
text by
秀間翔哉Sanechika Hidema
photograph byTomohiko Hayashi
posted2021/09/04 17:01
日本中のファンを虜にした稀代のアイドルホース・オグリキャップ
オグリキャップは堂々としたキャンターでスタンド前まで戻り、約18万人のファンに自らの姿を目一杯見せつけた。そしてマスコミがカメラを構える前まで来て、「さぁ、撮りたいだけ撮ったらどうだ」と言わんばかりに、澄ました顔して立ち止まって見せた。
その姿には自分がオグリキャップであるという圧倒的な自信と、これまで自分が独り占めしてきた目の前の光景をじっくり噛み締めているような哀愁すら感じた。
敗れた馬の騎手たちが「オグリに勝たれたなら仕方がない」と口をそろえた。
大川慶次郎氏が「私なんかは、いの一番に謝らなければいけませんね」と口にした。
リベンジを果たす「雑草魂」に人々は熱狂した
地方・笠松競馬場でデビューしたその馬は、地味な血統ながらたしかな実力で勝利を積み重ね、中央競馬に殴り込んできた。中央のエリートたちを次々と打ち負かし、幾多のライバルたちと激戦を繰り広げた。
挫折を味わうことも怪我をすることもあったが、その都度立ち上がってリベンジを果たす「雑草魂」に人々は熱狂した。
最後には負かした馬の騎手も、辛辣だった解説者も、冷たい言葉を浴びせた世間の心さえもその虜にして競馬場を去っていった。そして四半世紀以上がたった今もなお、彼の勇姿は人々の心を動かし続け、元気や勇気を与えているのである。
「競走馬 オグリキャップ」という一つの伝説は、いつまでも色褪せることはない。
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