甲子園の風BACK NUMBER
〈大阪桐蔭・盛岡大付を撃破〉近江「163cmの16番」の覚醒と重要任務とは? 1ケタ背番号を“剥奪”、継投時に交代させられても…
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2021/08/26 11:03
しぶとい打撃と明るい声で近江に欠かせない明石楓大。ベスト4、そして頂上へ欠かせない存在だ
この試合では第1打席でもタイムリーを放ち、3安打2打点と活躍。多賀章仁監督が打順を8番から6番に昇格させた期待に応えた。
大阪桐蔭戦でもマルチ安打と絶好調だが
2回戦の大阪桐蔭戦。近江は2回までに4点をリードされながら、中盤に追加点を許さず、コツコツと1点ずつ返して逆転勝利。中押し点の重要さを身を持って知っている近江が、試合を巧みに進めた。その中心にいたのが、チームで最も小柄な163cm、63kgの明石だった。大阪桐蔭相手に2安打を放ち、3試合で打率.625と絶好調だ。
ただ、甲子園に来るまでは、持ち前の明るさを出し切れないほど苦しんだ。滋賀大会は3試合で5打数無安打。安打が出ない焦りから体は開き、バットのヘッドが下がる悪いクセが出た。1ケタ背番号は“剥奪”され、今は16番をつけてプレーしている。
「滋賀大会で優勝しましたが、個人的には悔しい思いをしました。それを晴らすのは甲子園しかないと思って、今まで以上に自分を追い込んで練習しました」
誰よりも早く起きて、誰よりも遅くまでバットを振った。小さな体にあふれる強い気持ち。悔しさを力に変えた。多賀監督は「十分に期待に応えてくれている。明石は甲子園で覚醒した」と称えた。
部員100人を超えるチームで、明石は自らの役割をこう話す。
「このチームで目立つためには、声を出したり、気持ちを前面に出したりすることだと思います。スタメンで出ても、途中で交代しても、チームを鼓舞するのは変わりません」
気持ちがこもった明石のヘッドスライディングやガッツポーズは、チームがギアを上げる合図となっている。
必勝リレー時に交代となるが、ここからが“本職”
近江は、この試合も7回から必勝リレーに入った。
先発の山田陽翔が、エースナンバーをつける岩佐直哉にバトンを渡す。
山田はライトのポジションに入るため、明石はベンチに下がる。だが、ここからが明石の“本職”。ベンチの中央最前列に立ち、マスクをつけながら声を出す。今にもグラウンドに飛び出しそうなほど体を乗り出しながら。