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「納得してもらえることは、まずない。ただ…」巨人・中田翔が問われる“姿勢”…松井秀喜が“野球賭博から復帰”の選手に送った言葉とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/23 11:30
巨人移籍2試合目に早くもホームランを放った中田翔
そういう振る舞いが動画やSNS等で拡散され、それが子供たちにどんな影響を与えるのか。そのことを考えたことがあったのか、と球団関係者には問わざるを得ないだろう。
中田の行為はプロ野球選手の規範から逸脱するばかりではなく、そもそも1人の社会人として許されざるものだった。32歳の大人としては、あまりに非常識であり、未成熟だった。
それが日本ハムの13年と半年余りの人間・中田翔の姿だったのである。
だからこそトレードの賛否はともかく、巨人に移籍した中田にまず求められるのは、グラウンドで活躍し結果を出すことではないはずだ。
まずやらねばならないのは一人の大人として襟をただした姿をしっかり見せ続けることで、これはこれからユニフォームを着続ける間も、その先でもずっと継続しなければならないことなのである。
松井秀喜さんが星稜高校の後輩・高木京介に送った言葉
2016年に野球賭博への関与で1年間の失格処分となった巨人・高木京介投手が、巨人と再契約を果たしたのは17年だった。そのときに高木の出身校の星稜高校の先輩である元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんが、後輩に送った言葉がある。
「復帰してみんなに納得してもらえることは、まずない。ただ、『戻して良かった』と思ってくれる人が少しでも増えるような姿勢を見せて欲しい」
「結果で恩返しをする、ということではない。そういう姿勢を見せることが大事だと思う」
まさにいま、中田に聞いて欲しい言葉である。
中田がまず問われるのは、グラウンドでのプレーではない。普段の言動、人との接し方、服装や態度……まずそういう一つ一つを正すことからしかリスタートはないはずだ。
野球人としてではなく、32歳の1人の大人として、どういう振る舞いをするのか。どう変わった人間・中田翔の姿を見せることができるのか。今回の問題で問われているのは、そこである。
そういう姿勢を1人でも多くの人から認めてもらえた上で、初めて野球という舞台での結果が評価されることになる。その上で結果を残すことで初めて、育ててくれた日本ハムと栗山監督、移籍を受け入れてくれた巨人と原監督への恩義に、そして両球団のファンの応援と期待に応えることができる。
そのとき振り返ったら、あの左翼スタンド最上段に飛び込んだ移籍1号が、本当に劇的な一発として全ての人々の心に刻まれるはずである。
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