プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「納得してもらえることは、まずない。ただ…」巨人・中田翔が問われる“姿勢”…松井秀喜が“野球賭博から復帰”の選手に送った言葉とは?
posted2021/08/23 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
一応、劇的な一発ではあった。
日本ハムから無償トレードで巨人に移籍した中田翔内野手が、移籍発表から2日後の8月22日、東京ドームで行われたDeNA戦で、いきなり特大の本塁打を放った。
チームメイトへの暴力行為で無期限出場停止処分を受けた日本ハムから電撃的に巨人への移籍が発表されたのが20日のことだった。翌21日に一軍選手登録されて、この日は「5番・一塁」で先発メンバーに名を連ねた。
「第1打席はちょっと軽く足が震えるぐらい緊張していたんですけど、2打席目からはしっかり自分のスイングを心がけていけたかなと思います」
「本当にありがたいなという気持ちで一周していました」
本人が振り返った3点を追う7回の第3打席。1死二塁から左腕・今永昇太投手の初球、インコースへの144kmのストレートを迷うことなく振り抜いた打球は、中田らしい大きな弾道で左翼席上段に弾んだ。
もちろんベースを一周する中田に笑顔はない。
「自分自身、こうやって大きな拍手をジャイアンツファンの皆さんからいただけるとは思っていなかったので、本当に感謝しかない。当たり前のことではないので、本当にありがたいなという気持ちで(ダイヤモンドを)一周していました」
ネット裏の球団席では試合前に移籍の挨拶をした長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督が観戦。球団席の窓を叩いてベンチに戻る中田を祝福していたが、その姿に視線を送る余裕もなかった。
「本当ですか! 長嶋さんがどこの部屋にいるのか分からないので、そこはちょっと見ていなかったですね」
試合後にそんな長嶋さんの姿を知らされ感激の面持ちを見せた中田は、激動の1日をこう振り返った。