松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
松岡修造も脱帽…「嘆き悲しんでる暇があったら、楽しくしていよう」パラ水泳・辻内彩野の“超前向き”メンタル
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2021/08/24 17:01
進行性の目の難病「黄斑ジストロフィー」に冒された辻内彩野選手。目の前の松岡さんの姿ははっきり見えなくても“熱さ”は’しっかり感じている
松岡:今、僕たちはソーシャルディスタンス以上の3mぐらい間隔を空けて会話をしていますが、僕のことはどれぐらい見えていますか?
辻内:洋服の色が分かるぐらい。青いシャツと白いズボン。顔は見えていないです。
松岡:熱さはどうですか?
辻内:熱さは結構感じます(笑)。
前にいる人の頭がない!? 辻内のホラーな世界
松岡:僕の顔は見たことがない?
辻内:テレビで拝見していますよ。ただ私の場合、視力低下だけじゃなく中心視野が無いらしいので、ちょっと目線をずらすと松岡さんのお顔が消えたり出てきたりします。中心視野が無いという自覚はなくて、脳が勝手に処理して背景とつなげて映像を作っていると言われています。一番最初に自分の視野が無いのかもと感じたのは、前から歩いて来る人が急に現れたり、電車で前の席に座っている人の頭だけごっそりなかったりしたとき。結構ホラーなんですけどね(笑)。
松岡:だいぶホラーですね。ホラーですけど、彩野さんの場合、目から入ってくる情報の捉え方がスペシャル反応しています。物事の捉え方が、いい意味で独特だという感じがしました。
辻内:それは結構言われますね。人と違うって。性格もあると思うんですけど、深刻に物事を考えなさ過ぎると言われることがあって。難病っていうと本当はもうちょっといろいろ考えたり調べたり、病院の先生にたくさん質問したりするものだと思うんですけど、私は先生から「何かある?」と聞かれても、「何かあったら聞きます」で終わっちゃう。自分の病気のことを調べたりもしません。
松岡:泳ぐ上で目が見えにくいというのはどうなんですか?
辻内:それほど変わらないし、「これぐらいの見え方でいっか」って。
松岡:いや、だいぶ違いますよ。泳ぐときに見えなかったら、それは大変です。僕も子どもの頃、目をつぶって25m泳ぐという謎の練習があったんですけれども、間違いなくレーンロープに当たったり、最後ドカーンと壁に当たったりしたわけですよ。それは無いんですか?
辻内:わりと真っ直ぐ泳げますね。見えていた頃の感覚が強いので、急カーブしたり壁にぶつかったりというのは、眠いとき以外ありません。
松岡:言っている意味が分かんないな(笑)。