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投手・大谷翔平に敵将も白旗「終盤になるとギアを上げる…」40号本塁打に7連勝で《MVP&サイ・ヤング賞候補》の声も
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2021/08/21 06:00
ア・リーグ最速の40号本塁打を放ちチームメイトに祝福されるエンゼルスの大谷翔平
低迷するエンゼルスにあり、勝てる投手へと躍進を続ける大谷の投球には見逃せないポイントがある。100マイルの直球を投げる天性の才能ではなく、投手として高い再現性を誇る投球技術、試合状況や打者の出方を読み取る観察眼は、メジャーリーグ通算12勝の投手には思えない急成長だ。躍進の理由は、リアル二刀流での出場にあると感じている。
『Late & Quick』『Late & Sharp』
投打同時出場は今やすっかり当たり前のこととなった。6月以降は11試合連続だ。ファンを魅了し、大谷自身も一番野球を楽しめる瞬間であろう。だが、DHを解除して出場する投打同時出場は、背負う責任も果てしなく重い。
例えば、5回無失点。首脳陣やファンは合格点を与えるだろうが、本人は違う。DHを解除していることがその理由だ。降板後に強いられる4イニングDHなしの戦いは相当なディスアドバンテージとなる。だから、彼は1イニングでも長く投げようと思いをシフトする。結果、彼は大きな成長を遂げた。球種の選択に大きな変化が表れている。
7/19 対アスレチックス 直球42、スライダー&カット40
7/26 対ロッキーズ 直球40、スライダー&カット42
8/4 対レンジャーズ 直球34、スライダー&カット50
8/12 対ブルージェイズ 直球36、スライダー&カット52
8/18 対タイガース 直球40、スライダー&カット41
直球よりもスライダーとカットを合わせた“曲がり系”の球種の方が多くなっている。シーズン序盤にはなかったことだ。ホームプレート付近で小さな変化をする2つの球種は、打たせてとることで球数を抑え、長いイニングを投げることにつながる。そして、専門家は今、大谷のこの2つのボールのクオリティーをこんな表現で称えている。
『Late & Quick』『Late & Sharp』
先がスライダーであり、後がカットボール。ともに米国流の賞賛の表現で「ホームプレートに限りなく近づいてから鋭く変化する」ことを意味している。