幾度となく完敗を喫しても、その部分では決して折れなかった。鈴木みのるに敗れれば「俺が勝つまでは強い鈴木みのるのままでいろ」と言い、棚橋弘至に敗れれば「僕は棚橋弘至になりたいわけでも、なれるわけでもない。僕はもっとその上を見てるんで」と言う。

　どんな相手にも気持ちで負けることなく向かっていく姿はユニットに関係なく先輩達から気に入られた。新日本随一の悪さを誇るバレットクラブも例外ではない。石森太二からアイスクリームを送られたり、ジェイ・ホワイトに小道具にされたりと可愛がられた。

　この壮行試合でも、後から入場してくるオカダをリング上から仁王立ちで見下ろして迎えてみせた。

オカダを仁王立ちで迎えた上村

オカダ「もう言い訳は通用しなくなる」

　プロレスに興味を持ったのは武藤敬司の存在だったと言う上村は「武藤さんのように体を大きくして、しっかりレスリングもできて飛べて、という選手になりたい」とかつて語っていた通りの成長曲線を描いてきた。オカダ相手に気持ちで負けず、ドロップキックでペースを掴み、エルボーや閂スープレックスで攻め立てる姿はヤングライオンという存在の極みだった。

　しかし、それは同時にヤングライオンの限界を見せることにもなった。攻めても攻めてもオカダの顔色は変わらず、上村の息が上がっていくだけだった。まるで大人と子供のようだった。フライングメイヤーやボディスラムといった基本的な技でスタミナを奪われ、最後はラリアットからマネー・クリップでギブアップ負け。ヤングライオンという立場での経験だけでは埋められない圧倒的な差がそこにはあった。

マネー・クリップでギブアップ負け

　オカダは試合後「壮行試合を終えてしまうと、ヤングライオンだから、っていう言い訳は通用しなくなるから」とコメントした。

　ヤングライオンという立場は厳しい道場生活に耐えなければならないが、守られている存在でもあったのだ。

【次ページ】　第2試合　内藤に完敗した辻の胸には「感謝」と「焦り」