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「極上の悔しさを…」旅立つヤングライオン2人に立ち塞がったオカダ・カズチカ、内藤哲也という“圧倒的な壁”《新日本プロレス壮行試合》
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/08/20 11:00
8月1日に開催された新日本プロレス後楽園ホール大会の壮行試合にて、オカダ・カズチカに対して閂スープレックスを狙う上村優也
第2試合 内藤に完敗した辻の胸には「感謝」と「焦り」
続く試合で念願の相手だった内藤哲也と戦い、上村同様に完敗を喫した辻は「この船(新日本プロレスのヤングライオンという船)は頑丈だった。どんなことがあろうとも耐えてくれる立派な船だ」とこれまでの感謝を口にした。
それでも「ただ、進みが遅いんだ」と今のままでは差が埋まらないことへの焦りを認識していることを隠さなかった。
大学卒業後に就職をして社会人経験のある辻は現在27歳。これは棚橋であればU-30王座を作って団体を盛り上げ、IWGPヘビー級選手権も経験していた年齢であり、オカダであれば「今の辻くらいの時は、もうトップにいたし、棚橋弘至にも勝ってたし」(6.16にシングルで戦った後でのコメント)という年齢だ。入門時点での年齢が違うとはいえ、怪我や肉体の衰えとの戦いというものがほぼ確実に訪れるレスラー人生において、若いうちに上の舞台で戦いたいと焦るのは当然だ。
6.16のオカダ戦後には「もう、ヤングライオンとして自分を見るのはやめにしたんだ。ヤングライオンじゃなくて、新日本プロレスの1人の戦士として見てもらいたい。ヤングライオンとしてレベルが高い、出来のいいヤングライオン、そんなのはいらない」という言葉も発していた。しかし、そういう意識が強くあっても、結果には繋がらなかった。その1週間後の6.23に戦ったグレート-O-カーンには「試合も、移動も、給料も、全部用意してもらって、甘えてんなよ。それが試合に出てるんだろ」と言われてしまった。
そういう厳しい言葉も数え切れないほど浴びせられてきたが、先輩達はここまで頑張ってきた彼らに大きな期待を寄せているからこそ、悔しさをたくさん味わわせるのだった。
それは最後まで変わらなかった。
最後だからこそ、より強い悔しさを感じさせようとしていた。
オカダ、内藤からの「粋なメッセージ」
2人の若者を、対戦相手として送り出したオカダと内藤。彼らの闘いぶりにも、メッセージは込められていた。