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宮市亮は「世界一」の人間性でチームメイトもファンも魅了 度重なる大怪我に苦しんでもザンクトパウリに愛された理由《Jリーグデビューはいつ?》
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/08/14 17:00
横浜F・マリノスに加入した宮市亮。昨季まで在籍したザンクトパウリでは多くの人々に愛されていた
どんな試合でも泥だらけになってピッチを駆け回った
「ここが僕の故郷になるように」
移籍してきた当初、宮市はそう願っていた。その願いどおりにザンクトパウリは彼の故郷となり、ザンクトパウリの人にとって宮市はファミリーの一員となった。
日本人は謙虚だと言われる。宮市もそういう扱いを受けている。ただ、謙虚だといってもそれは相手との距離を詰めないわけではない。宮市の優しい笑顔に、選手も、コーチ陣も、スタッフも、そしてファンも瞬く間に惹かれていった。
普段は謙虚でフレンドリーな宮市は、ひとたびピッチに立つとチームのために誰よりも闘う戦士となる。絶対的な武器であるスピードを活かしてピッチを躍動し、ファンからの期待に満ち溢れた声援がその背中を押した。
ザンクトパウリ時代の宮市は、どんな試合でも泥だらけになってピッチを駆け回った。速いだけの選手ではなかった。身体を巧みに使ってボールをキープし、味方を生かし、相手にボールが渡ればインテリジェンスを感じさせるポジショニングと素早いアプローチで相手を追い込んだ。倒れても、倒されても、すぐに立ち上がって、また駆け出した。
そんな宮市を、ザンクトパウリのファンは心から愛していた。いや、過去形にするのはおかしい。ザンクトパウリのファンは、今も心から愛しているのだ。
初ゴール時にはファンもともに号泣
宮市のファンへの思いも特別だ。
「ファンタスティックなファン」
いつも、そう絶賛していた。
加入初年度のリーグ開幕1週間前、スペインのラージョ・バジェカーノとの親善試合で左膝十字靱帯を断裂。長期離脱を余儀なくされたときにはファンも一緒に心を痛め、復帰を祈願した。
2016年4月1日、ホームでのウニオン・ベルリン戦で、リハビリを終えてカムバックを果たした。ミラントア・シュタディオンは、割れんばかりの声援でヒーローを迎え入れた。そして、同年5月のカイザースラウテルン戦、ザンクトパウリで初となるゴールを決めたときには、ともに号泣していたファンがなんと多かったことか。
2017-18シーズン、今度は右膝十字靱帯を断裂。とにかく、怪我が多かった。それでも宮市はポジティブな姿勢を崩さなかった。
苦しいはずなのに、絶望してもおかしくないのに、常に笑顔を絶やさなかった。そんな宮市を、ファンは最大限のリスペクトで支えていた。
「こうしておけばよかったという後悔はない」と、宮市は言う。
「毎日、毎日、全力でやった結果、怪我をしてしまった。何があるかなんて誰もわからない。後悔とかは本当になくて、ただ毎日の積み重ねが大事だなと思っています」