“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER

高3じゃ遅い? Jスカウトが有力選手を「高2の夏で見極める」理由…豊作の2004年世代、インターハイが「就活」の場に《注目6選手の写真も》

posted2021/08/13 06:00

 
高3じゃ遅い? Jスカウトが有力選手を「高2の夏で見極める」理由…豊作の2004年世代、インターハイが「就活」の場に《注目6選手の写真も》<Number Web> photograph by Takahito Ando

夏のインターハイに出場する注目の2年生たち。左から神村学園MF大迫塁、FW福田師王、静岡学園DF行徳瑛、帝京DF入江羚介

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph by

Takahito Ando

「高校2年生の夏」の重要性が増している。

 8月13日からサッカーインターハイが開幕する(福井県/1回戦は14日から)。Jリーグや大学サッカー部の多くのスカウティング部隊が一堂に会する大会だ。

 かつて高体連の選手たちにとって“就職活動の場”と位置づけられていたのは、冬の全国選手権だった。しかし、昨今はスカウティングアプリケーションの発達やアジアマーケットの拡大、そして高校生の海外志向の意識が高まったことで、いきなり海を渡る例も少なくない。それに比例するように、各Jクラブ、大学の逸材の争奪戦も熾烈を極めている。

 J1湘南ベルマーレの牛島真諭スカウトは現状をこう語る。

「メジャーな選手であればあるほど、かなりの確率で高3時点での競合は発生しています。(高校3年生に)声をかけた時点で、既に他クラブや大学と具体的に話が進んでいるケースが多々ある。そのため高1、高2の世代の中から、まだメジャーにはなっていない選手を探し出し、獲得に向けて早めに動き出す。そうしないと、クラブのビジョンに合う選手が獲得できないんです」

 さらに、プロ入りの実力を有しながらも大学進学を希望する高校生(高体連の選手)が増えたことも大きい。特に有力選手は、夏前後に進路が確定するJクラブユース組のトップチーム昇格を逃した選手たちとの競争を避けるために、5、6月の段階で決まる強豪大学サッカー部のトップ推薦枠を狙う。そのため、高3の夏前には進路が決定している選手がほとんどだ。他クラブや大学との競合を覚悟してでも獲得に乗り出したい高3の選手の場合は、稀に夏を過ぎた時期まで粘ることもあるというが、それもほんのひと握りのケース。

 つまり、高体連の有力選手を獲得する場合は、高2の時点での“見極め”が重要になってくる。

高2でJ内定を発表した鈴木淳之介

 実際、湘南ベルマーレは昨年冬に帝京大可児高校3年MF鈴木淳之介の獲得を発表している。牛島スカウトは鈴木を高校2年の夏で発見し、すぐにリストアップ。秋にかけてリーグ戦と選手権予選に足を運んで見極め、「選手権に出たらメジャーな選手になって争奪戦が起こる可能性が十分ある」と、その年の冬(選手権本戦直前)に正式オファーを出した経緯がある。高2の選手権前後に声をかけても出遅れる可能性があったという事例は、ひと昔前では考えられなかった話だ。

 ただ、牛島スカウトは「厳しい夏を超えて、ひと皮剥ける選手(高3)はたくさんいます。もちろん我々はそういう選手も必ずチェックします」とも語る。しかし、夏以降の獲得に関しては、進路決定を急ぐ高校3年生よりも、よりプロ入りの意志が固い大学生に切り替えるクラブの方が多いのが現状だ。大学サッカーにおいても同じように早期内定(大学3年)が主流となり、後期の大学リーグやインカレのラストチャンスに懸ける大学4年生にターゲットするほうがピックアップしやすい。

 これらの流れに鑑みると、「高校2年生の夏」の重要性をご理解いただけるだろうか。特にJ2、J3クラブともなれば、獲得に向けた具体的なアプローチを急ぐのは当然だ。

【次ページ】 「3年になってからでは遅い」

1 2 3 NEXT
神村学園高校
大迫塁
福田師王
静岡学園高校
行徳瑛
前橋育英高校
徳永涼
大津高校
小林俊瑛
帝京高校
入江羚介

高校サッカーの前後の記事

ページトップ