濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「もっともっと“黒い虎”に」…“闇堕ち”で大変身、スターライト・キッドが狙う“因縁のベルト”と“岩谷麻優超え”の意味とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2021/08/12 11:00
“闇堕ち”したスターライト・キッド。5★STAR GP最終戦では、岩谷との因縁の対決が待っている。
マスクとコスチュームを黒にした。マスクの下のメイクを変え、カラコンにネイル、髪型も。「大人」、「色気」、「小悪魔」なイメージだという。
「結果、SNSを見たらこっちのほうがいいっていうコメントが多くて、私の勝ちだなと(笑)。もちろん批判的な声もあるんですけど、それはヒールとして当然のことなので。応援されるだけのヒールなんてつまらない。ついてこれる人だけついてくれば、それでいい」
ヒールだから当然、反則もする。試合にセコンドが介入するし、攻撃は全体的に「えげつなく」なった。STARS時代は考えられないことだったが、やってみたら「気持ちが晴れ晴れとしてスッキリしました」。ヒールにはヒールの生き方があり闘い方がある。リーダーである刀羅ナツコの「全員の人生を預かっている」という言葉も心に響いた。その「全員」の中に、自分の名前もあった。メンバー間に強い信頼関係があるから、やりたい放題できるんだと気づいた。
ジュリアとの開幕戦で見せた“意思表示”
団体スタッフによると“闇堕ち”以降キッドと大江戸隊のグッズが急激に売れ出したそうだ。そういうところにも、ファンの評価が表れている。
おそらくファンは「キッちゃん」の変化を求めていた。いや、他ならぬ本人がそうだった。デビューしたのは10代前半。結果が出せなくても主張しなくても「まだ子供だから」、「若いから」で済んだ。しかしそろそろ、そこから脱却しなければいけない。いつまでも子供の印象で見られるのが嫌だった。大人のレスラーとして結果を出し、実力を証明したい。そんな気持ちが抑えきれなくなっていたところだった。
きっかけは昨年の初冬だ。STARSから主力メンバーの中野たむが抜け、白川未奈、ウナギ・サヤカと「コズミック・エンジェルズ」を結成した。たむたちとの闘いで、キッドは自分が「STARSの2番手として引っ張って、支える立場」だという自覚を強めた。同時に「欲がどんどん出てきた」。そんな時に、大江戸隊強制加入が決まる。タイミングとしては偶然。しかし“闇堕ち”は殻を破るきっかけになった。