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「もっともっと“黒い虎”に」…“闇堕ち”で大変身、スターライト・キッドが狙う“因縁のベルト”と“岩谷麻優超え”の意味とは? 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byEssei Hara

posted2021/08/12 11:00

「もっともっと“黒い虎”に」…“闇堕ち”で大変身、スターライト・キッドが狙う“因縁のベルト”と“岩谷麻優超え”の意味とは?<Number Web> photograph by Essei Hara

“闇堕ち”したスターライト・キッド。5★STAR GP最終戦では、岩谷との因縁の対決が待っている。

 7.31横浜大会、リーグ開幕戦はジュリアに敗北を喫した。だが試合後のインタビュースペースでは「完敗ではないと思ってる」と語った。場外戦でペースを奪い、リング内ではグラウンドのしつこい足攻めで動きを封じつつ、飛び技で翻弄しにかかる。まだジュリアのほうが一枚上手だったとはいえ“私はこうやってトップに食い込むんだ”という意思表示のような試合に見えた。

 対するジュリアは「正々堂々やって勝てると思ってんのか。ジュリアを倒したいなら汚いこともやってみろ。もっともっと悪くなって、またやろうぜ」。まさにここが、キッドの課題であり可能性だ。

もっともっと“黒い虎”になっていく

 リーグ戦開幕前、「黒く染まる」ことに活路を見出しながらも、まだ凶器を使うことには迷いがあるとキッドは語っていた。7月21日の札幌大会でたむのワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦した際にも、そのことがセコンドの“誤爆”につながっている。凶器を使って相手を痛めつけ、反則負けで高笑い。それも大江戸隊の闘い方なのだが、キッドには結果を出すことへのこだわりがある。

「反則負けじゃなく、勝ちという結果を残したいので。勝つこと、ベルトを巻くことが実力の証明になる。大江戸隊にもチャンピオンになる力があるんだっていうところを見せたいです。個々の強さがあっての大江戸隊なんだって。でも、これからどんどん黒に染まっていったらどうなるか。凶器を使うようになるのかどうか、その過程も気にして見てくれればいいし」

 8.1横浜でのリーグ2戦目は、同じ大江戸隊の鹿島沙希に勝利。手の内を読まれ苦しい展開が続いたが、新技「黒虎天罰」(こっこてんばつ=変形ツームストーン・ドライバー)を決めた。試合後は倒れた鹿島にマスクを被せて首を掻き切るパフォーマンス。「同門でも容赦しない」、「全員に天罰を下す」というアピールだった。さらに「もっともっと黒い虎になっていく」とも。

 勝ち点2を得るとともに勝負強さ、勝ちへの貪欲さを見せたキッド。3戦目、8.8大阪大会でのなつぽい戦は両者リングアウトでドローとなった。リーグ公式戦としては、ポイントを取りきれなかったことになる(両者に勝ち点1ずつ)。しかしキッドにとって、この試合には前哨戦としての意味もあった。なつぽいが持つハイスピード王座に、8.29汐留大会で挑戦することが決まっているのだ。タイトルマッチで勝つために、あえて“両リン”で相手のメンタルを乱そうということだろう。それが「黒いキッドからの挨拶がわり」だった。

 スピードとテクニックに長けた選手たちが争うハイスピード王座に、キッドは過去7度挑戦して未だ勝てていない。そこで「次こそ絶対に負けられない」と言うだけでなく「7回負けてまだ諦めない、同じベルトに8回も挑戦するって、そんなこと他の選手にできます?」と笑ってみせたキッド。このあたりのふてぶてしさも“黒虎”としての変化だ。

【次ページ】 “奪還マッチ”で「麻優さんが勝ったからこそ…」

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