濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「もっともっと“黒い虎”に」…“闇堕ち”で大変身、スターライト・キッドが狙う“因縁のベルト”と“岩谷麻優超え”の意味とは?
posted2021/08/12 11:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
カギになるのは“長丁場”だろう。
女子プロレス団体スターダム恒例のリーグ戦『5★STAR GP』が、7.31&8.1横浜武道館2連戦から始まった。
ビッグマッチ2DAYS興行というだけでも団体の勢いを感じさせるが、リーグ戦の規模も史上最大スケール。2ブロックに10名ずつがエントリー、最終戦は9月25日の大田区総合体育館と丸2カ月、21大会かけての闘いになる。
長期間、しかも真夏。コンディション維持も優勝への重要なポイントだ。また、この2カ月の間にシビアなシングルマッチの経験を重ね、大きく成長する選手が出てくるかもしれない。
そんな“大化け”候補の筆頭と言えるのが、スターライト・キッドだ。1カ月ほど前、彼女は“闇堕ち”して大イメージチェンジを敢行。その変化がリング上にも表れている。リーグ戦では序盤5大会で公式戦3試合を行ない、1勝1敗1分。際立った結果ではないが、観客に強いインパクトを残しているのは間違いない。いったい彼女に何が起きたのか。
大江戸隊への“強制移籍”というショッキングな出来事
デビューは2015年。本人も言うように「岩谷麻優の隣でザ・ベビー(フェイス)としてやってきた」。体は小さいが空中殺法が得意、明るくてまっすぐで奇をてらわないファイトが持ち味。ファンは親しみを込めて「キッちゃん」と呼ぶ。
しかし今年6月、所属するSTARSとヒールユニット大江戸隊の抗争の中で“敗者強制移籍”ルールの試合に敗れ大江戸隊に加入させられる。ベビーフェイス(善玉)からヒール(悪役)へ。本人にとってもファンにとってもショッキングな出来事だった。ユニット移籍は決して珍しいことではないのだが、“スターダムのアイコン”岩谷とその右腕であるキッドの立場が動くことはないと思われていた。
「しかも自分で裏切ったのではなくて強制加入なので。自分自身どうしていいか分からないんですよ。しばらくは悩んで悩んで、葛藤してました」
「ついてこれる人だけついてくれば、それでいい」
だが最終的に自分自身で“闇堕ち”を決めた。「性格的に中途半端なことはしたくなかった」と言う。
「もう本当にやるしかない、大江戸隊でやっていくしか道はない。じゃあどうすればいいのか。“STARSのスターライト・キッドを1ミリも残さない”と決めました。やるならとことんやってやろうと」