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ユーべに帰ってきた“非情”のアッレグリの揺るぎない哲学 スクデット奪還へ「もはやロナウドを特別扱いしない」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/08/06 17:00
再び指揮を執るアッレグリの下、今季のC・ロナウドは“王様特権”をはく奪されることになりそうだ
アッレグリは、ミラン監督時代の2010-11シーズンに、ロナウジーニョやフィリッポ・インザーギ、アンドレア・ピルロといった世紀の名手たちを次々にベンチへ追いやった。「まるで管財人のように冷酷だ」と言われながらも、スクデットを勝ち取ることで批判を封じ込めた。
非情のアッレグリは、EURO2020を制したイタリア代表CBコンビである主将ジョルジョ・キエッリーニやレオナルド・ボヌッチにも安穏とすることは許さない。
「ロナウドを始め、キエッリーニ、ボヌッチのベテラン組はチームのために何ができるのかを示さねばならない。若手に“ユベントスとは何か”を理解させるため、彼らは模範とならねばならない」と厳しい注文をつけた。
得点源として期待を寄せるのは、7年目を迎え副主将も任せるFWパウロ・ディバラやEUROでブレイクした次世代エース候補筆頭のFWフェデリコ・キエーザだろう。後者にはリバプールから1億ユーロのオファーが届いたが、クラブ側はぴしゃりと拒否した。
ユーベの平常運転とはスクデットへの道のりを意味
21年の夏、ユーベのフロントも体制が一新している。
ロナウドを1億ユーロで獲得した豪腕SDファビオ・パラティチがトッテナムへ去り、後任にはアンドレア・アニェッリ会長の懐刀フェデリコ・ケルビーニがFD(フットボール・ディレクター)として就任。役員会議ではやり手のビジネスマン、マウリツィオ・アリバベーネが新CEOに昇格した。
アリバベーネは元フェラーリF1チーム総責任者という派手な肩書を持ち、その知名度とビジネス分野での求心力はあるが、彼が率いた期間のフェラーリが芳しい戦績を上げたとは言い難く、筆者は彼がユーベの新社長となることに一抹の疑念を隠せない。
クラブの頭であるアニェッリ会長はアッレグリの会見に同席し、名将の再招聘を「友情ごっこでよりを戻したわけではない」と厳しい表情で断じた。
過去2シーズン、“楽しませて勝つ”スタイルへ方向転換したクラブの試みは頓挫した。昨季、指導者1年目のピルロは国内カップ2冠を獲ったが肝心のリーグ戦で4位に沈んだ。2季前のサッリは、スクデットを勝ち取ったものの選手たちとの信頼関係を築くまでには至らなかった。
冒険と変化を求めた2年間に終止符が打たれ、たるんだ規律と脇に逸れた航路を“平常運転”に戻すためにアッレグリは呼ばれた。
ユーベの平常運転とは、スクデットへの道のりを意味する。