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ユーべに帰ってきた“非情”のアッレグリの揺るぎない哲学 スクデット奪還へ「もはやロナウドを特別扱いしない」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/08/06 17:00

ユーべに帰ってきた“非情”のアッレグリの揺るぎない哲学 スクデット奪還へ「もはやロナウドを特別扱いしない」<Number Web> photograph by Getty Images

再び指揮を執るアッレグリの下、今季のC・ロナウドは“王様特権”をはく奪されることになりそうだ

 名将の下で原点回帰を目指す新生ユーベは、すでにテストマッチを2試合こなしている。若手主体のチーム構成で、3部チェゼーナを相手にした先月25日の初戦に3-1で勝ち、DFデリフトやMFラビオといったEURO出場組が加わった8月1日のモンツァ(セリエB)戦にも2-1で連勝した。

 低く構える4-3-3で、FWクルセフスキに3つのポジションを任せたり、MFラムジーを中盤底のレジスタに置いたり、この時期ならではの実験的起用も見られるが、8日に予定されているバルセロナとのガンペール杯では一段ギアを上げたユーベが見られるだろう。

 移籍市場の目玉である、イタリア代表MFマヌエル・ロカテッリの獲得交渉は、移籍金4000万ユーロを要求するサッスオーロ側との交渉が難航中。コロナ禍の移籍市場にあって戦力のブラッシュアップは最小限に留まるかもしれないが、サントスの注目株FWカイオ・ジョルジ獲得が目前とされ、カンピオナート制覇のための十分な戦力は揃っている。

アッレグリの勝負哲学「コルト・ムーゾ」を高く評価

 王座奪回に向け、アニェッリ会長はアッレグリの勝負哲学「コルト・ムーゾ」を高く評価しているのだ、と強調した。コルト・ムーゾとは、競馬の「ハナ差」のことだ。

 2018-19シーズンの終盤、アッレグリが率いたユベントスは地方クラブSPALに1-2でまさかの敗戦を喫した。指揮官は大騒ぎする周囲をなだめつつ、「競馬で勝つのに何馬身も引き離す必要はない。ゴールの瞬間にライバルより先にいればいい。それが、ほんの“ハナ差”であってもだ」と諭した。

 そして実際、その後の6試合を1勝3分2敗で切り抜け、2位ナポリの追走を退けた。それは一流の勝負師の勝ち方だった。

 アッレグリは監督として個人5連覇を達成した史上屈指の名将だが、彼のユベントスが退屈だったことは一度もない。現実ではサッカーの実利主義と結婚している彼だが、心根ではファンタジーを愛しているからだ。

 原点回帰と“コルト・ムーゾ”。王様待遇を剥奪されるロナウドの反応。EUROを制した最強CBコンビとキエーザら若手の爆発の気配。

「スクデット(のワッペン)がないユニフォームを着るってのは、(タイトル奪回への)刺激になるよ」

 主将キエッリーニが言う通り、今季のユベントスは静かに燃えている。

 不敵に牙を研ぐ“老貴婦人”を見逃す手はない。

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