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「スマン、こんな晴れ舞台慣れてない」 警察官なのにタトゥーでヤンチャなイタリア人が“大波乱の100m最速男”になるまで《東京五輪》
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2021/08/06 17:02
ジェイコブスのあっと驚く金メダル。ボルトが去った後の五輪100mの最速男は、面白エピソードの持ち主だ
「99.9%、俺はイタリア人です」
トラックの先には、フィールド競技で十数分前に男子走り高跳びで金メダリストになったイタリア陸上チームの親友ジャンマルコ・タンべーリが両腕を広げて待っていた。2人の戦友は固く抱き合った。
ミックスゾーンには、父親がフロリダ出身と知った米国記者たちが駆けつけ、何とか陸上王国との縁を聞き出そうとするが、勉強嫌いの新王者は英語があやふやで彼らは困惑するばかり。
「99.9%、俺はイタリア人です。金メダルはイタリアに捧げます。それから俺の子供たち、俺の家族、支えてくれたチーム全員にも。記録はいつか破られる。でも、この五輪の金メダルだけは永久に俺のものです。我が家のリビングの壁にずっとあり続けるでしょう」
ちょっとやんちゃな警察官スプリンターが、世界最速の男になった。
コーチも母国の偉大な先達も、ジェイコブスの記録はまだ伸びると口を揃える。
8月21日から予定されている米国オレゴンでの競技会でも、その後のバカンスを予約している南の海のバリ島でも、ラモントマルセル・ジェイコブスの名を知らないとは誰も言わないだろう。
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