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《京大卒の銅メダリスト》山西利和25歳が語った“なぜ競歩を選んだのか?”「最初から競歩をやりたいと陸上部に入る人はいなくて…」
posted2021/08/05 20:00
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Asami Enomoto
競泳、柔道、体操、レスリング、スポーツクライミング。
開幕まで約2週間となった東京オリンピックで、皆さんの頭に思い浮かぶ日本人の金メダルが期待できる競技・種目は何だろう?
個人的にその筆頭にあげたいのが、やや意外に思われるかもしれないが、競歩の男子20km代表・山西利和(愛知製鋼)である。
山西は高校・大学時代に世界ユース、ユニバーシアードを制し、2019年にはドーハ世界陸上でも優勝するなど国際大会の実績も十分だ。しかし、「京大卒」という経歴がクローズアップされることが多く、また競歩という種目がマラソンなどに比べてどうしても地味であるため、メディアでその実力や精神面が深く掘り下げられることが少ない印象があった。
今回、本人へのインタビューの言葉をもとに、学歴を抜きにした競歩選手・山西利和を“解剖”し、金メダル候補に推す理由を書いてみたい。
金メダル候補が繰り返す「地力をあげる」
山西が世界王者となった19年秋以降、レース後の取材で繰り返している言葉がある。「地力」だ。
〈高温多湿の中で行われた昨秋の世界選手権のダメージは大きく、状態は8割ほどという。東京五輪の金メダル候補は「地力がついてきている」と手応えを示した〉(2020年2月17日サンスポWEB版、日本選手権20km競歩後)
〈2年前に自身が作った大会記録を約33秒更新。「大会時点のコンディションは、2年前の方がよかった。地力が上がってきていることを確認できた」と納得顔だった〉(2021年5月16日読売新聞オンライン、中部実業団選手権後)
一読、納得はできる。ただ、「地力」という言葉に具体性がないため想像が広がらず、また、世界チャンピオンになったのにそう簡単に向上させられるものなのか、という点を疑問に思っていた。
本人に解説を求めると「なかなか短い囲み取材などでは答えるのが難しくて」と苦笑しつつ、見事な「解答」を出してくれた。