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「これほど多くの犠牲を払ったランナーは…」30歳大迫傑は“濃すぎる4年間”で日本男子マラソン界をどう変えた?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/08/07 11:04
東京五輪を前に、自身のTwitterにて“事実上のマラソン引退”を発表した大迫傑
自ら積極的に発する彼の言葉で、印象に残っているものがある。それは、昨年の東京マラソンを走った直後のこんなツイートだ。
“順位は4位でした、でも僕は今日、僕にとっての勝利を手にしました”
その真意について、当時、大迫はこう答えてくれた。
「僕は、スタートラインに立った時点で1つの勝利をを手にしていると思っています。新しい地で新しい挑戦をし、半年間厳しい練習をしてきた。そして、スタートラインに立って、最後まで走り切ることができた。自分自身に勝てたっていう、そういう思いがありました」
大迫が正式に日本代表に決まった直後に、東京オリンピックの1年延期が決まった。だが、オリンピックが先延ばしになろうと、我々の想像をはるかに超えるハードなトレーニングを積み、多くの犠牲を払って、本番に備えてきたことだろう。
8月8日、己に打ち勝ち、ラストランのスタートラインに立つ彼に、まずは祝福を贈りたい。その後で、レースを大いに楽しませてもらおうじゃないか。