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金メダリスト入江聖奈20歳が読んでいた『がんばれ元気』ってどんなマンガ? 40年越しの脚光、アニメ版の続編を!
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2021/08/05 11:00
女子ボクシング初の金メダルを獲得した入江聖奈(20歳)。40年前に連載が終了している漫画『がんばれ元気』がボクシングを知るきっかけだった
26年前(1995年)に文藝春秋から発売された『Number VIDEO スポ根列伝 ヒーロー・ヒロインのクライマックス』というVHSビデオを視聴しても、ここに『がんばれ元気』は登場しない。
スポーツであり、根性も多分に重要な作品であるのに、いわゆるスポ根とはやや趣きが違う。これが80年代以降のスポーツ漫画となると、ラブコメのエッセンスが含まれたり、熱血スポ根全盛時代の反動から、照れ隠しのようなギャグ要素を多分に含んだスポーツ漫画が主流となった。だが、ボクシングを題材にした心優しき少年の人間ドラマを描いた『~元気』はちょうど、その狭間の時代を担った作品だった。
元気と入江に共通点!?
また、このVHSビデオに登場する作品の主人公たちは、悲しくも競技に殉じて選手生命を失ってしまう悲劇的結末を迎える者が多かった。
『あしたのジョー』の矢吹丈は真っ白な灰となり、『巨人の星』の星飛雄馬は左腕を破壊、『キャプテン』谷口タカオは右手人差し指が曲がらなくなり野球を諦め(ともに続編で野球に復帰)、『侍ジャイアンツ』の番場蛮はマウンド上で仁王立ちのまま絶命(※原作版のみ)といった具合だ。
だが、元気は最終回にて父・シャーク堀口の仇であり、尊敬すべきライバルであった関拳児を倒し、WBA&WBCの統一世界フェザー級王者になった直後に19歳で引退。「ほっ!ほっ!ほっ!」と独特の息づかいでランニングしつつ、朝もやの中、祖父母の待つ故郷の家へと帰っていくシーンで物語は締めくくられる。
入江選手は同じフェザー級というだけでなく、金メダルという最高の栄冠を獲得した直後に20歳で引退表明という部分まで、元気と同じ道を歩んだということになる(入江は後日、大学4年で迎える来季の全日本選手権まで競技を続行すると弁明)。
ボロボロになるまで競技に殉ずることはなく、自分の意思とともに次なる人生のステップへと踏み出すという美学だ。