「このチームにきて結果を出すことでいろいろなものを手に入れ、そして負けることでそのほとんどを失うということを学びました。ただ、松本という街で、地域と一緒にたたかう素晴らしさを知った、最高のチームメイトにあった、いつも背中をおしてくれるサポーターにあった。そして松さんと出会えた」（原文ママ）

サポーターにこれからも継承してほしいという思い

　敢えて入れたこの一文には、3つの意味をこめたという。

　1つめは多大な影響を受けた松田に対する思い、そして2つめはファン、サポーターに松田直樹をこれからも継承してほしいという思いだ。

「8月4日の命日に近い試合に背番号3のシャツをみんなで着ますけど、これはマツさんを慕ってきたハユさん（田中隼磨）がいることも大きい。もしマツさんを知る選手が誰もいなくなったら、これってフェードアウトする可能性だってある。でもサポーターに受け継がれていたら、なぜやらないんだっていう声が挙がると思うんです。マツさんを知っているサポーターは、マツさんを知らないサポーターにも伝えてほしい。この一文を入れることでマツさんのプレーを見たいって思う人も出てくるかもしれませんから。もう一つ言うと、マツさんの山雅のチャントを聞きたいなって思うんです」

僕も立ち尽くして、名前を呼ぶことしかできなかった

　最後の1つを尋ねると、飯田は大きくフーッと息を吐き出してから言葉を続けた。

　それは、これからも松田の死と向き合っていくという意思表示でもあった。

松本山雅時代の松田直樹（2011年撮影）　©Takuya Sugiyama

　練習中に倒れたあの日のことは絶対に忘れられない。

「今でも思い出しますよ。みんなの呼ぶ声が聞こえるんです。マツさん、マツさんって。僕も立ち尽くして、名前を呼ぶことしかできなかった。無力感しかなかった。走った後にふざけながら倒れたようにも見えたから、もしもう一度あの場面に直面しても、おかしいって気づけただろうかって……」

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