猛牛のささやきBACK NUMBER
《侍ジャパン》室伏広治から教わった「一投一念」…“マッチョマン”吉田正尚が16年秋に送った「便箋にびっしり直筆の手紙」とは?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/04 11:01
アメリカ戦で先制点となるタイムリーを放った吉田正尚。シーズンの好調をそのまま侍ジャパンでも発揮している
東京五輪では、その追い込まれた時のバッティングを、追い込まれる前からしている場面もある。オリックスと日本代表での求められる役割の違いや、試合展開によって使い分けているのだろう。
6月に日本代表に選出された直後、吉田はこう語っていた。
「役割が、オリックスと同じなのか違うのか、まだわからないですけども、首脳陣の方が思っている理想があると思うので、そこにうまくフィットできれば一番いいのかなと思います。選んでいただいた以上、結果で応えたい。金メダルを獲ることが一番だと思うので、しっかり貢献したいという気持ちです」
吉田にとっては、金メダリストに導かれた五輪と言えるかもしれない。
プロ1年目のオフから、吉田は毎年、アテネ五輪ハンマー投げ金メダリストで、現在はスポーツ庁長官を務める室伏広治氏にトレーニングの指導を受けてきた。きっかけは、吉田が送った熱烈な手紙だった。
『筋肉番付』を見て驚いた
吉田の中にある室伏氏の最初の記憶は、子供の頃に見たテレビ番組『筋肉番付』の中で輝きを放つスーパーアスリートとしての姿だった。
「野球選手も出ていたので興味を持って観たんですけど、そうしたアスリートの中でも室伏さんは、パワーもスピードも、群を抜いて圧倒していた姿が印象的でした」
プロ野球選手となってから、様々なトレーニングを調べるうちに、室伏氏が編み出したトレーニングの動画を見つけ、興味を持った。1年目は腰を痛めて離脱し、63試合の出場に終わっていたこともあり、世界一を知る人から、トレーニングやメンタリティ、自己管理術など、あらゆることを吸収したいと思いが募り、秋季キャンプを行っていた高知のホテルで筆をとった。何度も書き直し、誤字脱字がないかなどを知人にもチェックしてもらい、意を決して投函した。
するとしばらくして、室伏氏から「やりましょう」という電話がかかってきた。